城西大学に、日本初の「VRテコンドー」サークルが誕生。仕掛け人・香川先生に聞く、普及と研究のリアル。

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Kentaro Hisadomi
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Keisuke Kimura
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Shinya Kosaka / BOATship

【CROSS TALK】 城西大学に、日本初の「VRテコンドー」サークルが誕生。仕掛け人・香川先生に聞く、普及と研究のリアル。

70歳を超えたとしても20代と対等に戦えたり、はたまた小学生が大人に勝てたり…。現在、世界的に人気が高まる「VRテコンドー」は、体格も年齢も性別も関係なく、誰しもが同じ土俵に立てる次世代のeスポーツ。この可能性にいち早く目をつけたのが城西大学です。理学部 情報数理学科の研究テーマに据えるとともに、全国でも初となる公認サークルを今冬に立ち上げる予定。発起人である香川渓一郎先生は、なぜこの競技に着目し、情熱を傾けるのか。オープンキャンパスが行われてていた紀尾井町のキャンパスで話を聞きました。

​​​​「すごいチームだ」と見ていた側から、率いる側へ。​ 

8月某日、城西大学の東京紀尾井町キャンパス。オープンキャンパスの開催に合わせて、エントランスには「VRテコンドー」の設備が構えられていました。

そもそも、VRテコンドーとはなんなのかというと、専用のVRゴーグルとセンサーを身につけ、自分の体の動きをそのままアバターに反映させて対戦する、新感覚のeスポーツ。パンチやキックを繰り出すと、画面の中のアバターが同じ動きで応戦。相手に一定以上のダメージを与えれば勝利というルールです。

画面だけを見ればまるで格闘技ゲームですが、アバターを動かすのはスティックでもなく、ボタンでもなく、自身の身体です。

近年は世界規模で競技人口が拡大しており、その証拠に2026年に愛知・名古屋で開催される第20回アジア競技大会では、テコンドーとともに、VRテコンドーも正式種目に。将来的にはオリンピック競技の候補としても名前が挙がる、いま注目のスポーツです。

最大の特徴は、体格や年齢、性別による有利不利がほとんど生まれないこと。実際の大会でも、テコンドー有段者が子どもに敗れるようなケースも珍しくないといいます。

そんなVRテコンドーに、大学として本気で向き合っているのが城西大学。この冬から、日本の大学として初となる公認サークルも始動させます。

率先して体験者たちにレクチャーをしていた、理学部情報数理学科2年の尾崎暖太さん(写真左。埼玉栄高校卒)と石原誠也さん(写真右。城西川越高校卒)。ともにVRテコンドーサークルに入る予定。「ゲームっぽさもあるし、スポーツっぽさもある。両方の感覚が必要なのが面白いんです」と、その魅力を語ってくれた。

この日もサークルに参加予定のメンバーが先頭にたち、オープンキャンパスに来た高校生とエキシビジョンマッチを開催。会場も大いに盛り上がりました。

そもそも、なぜ城西大学は、これほどまでにVRテコンドーの普及に力を注いでいるのでしょうか。その中心に立つサークルの発起人・香川先生にその理由を聞きました。

​​​​データが最大の武器になる、新競技の可能性。​ 

香川渓一郎さん
1995年生まれ、埼玉県出身。早稲田大学・大学院では応用物理学を学び、卒業後は北海道大学で電子科学研究所の特任助教として勤務。2025年から城西大学の理学部 情報数理学科で教鞭を執る。ルービックキューブを1分で色を揃えられるという特技の持ち主。

まず、香川先生はもともとテコンドーをやられていたのでしょうか?

香川 まったくです。力を入れてやっていたのは卓球くらいですし、格闘技とは無縁でした。ただ、大学院生のとき、応用数学の研究をしていましたので、スポーツのデータ分析はよくやっていましたね。

昨年に北海道大学から城西大学に転任されたと伺いました。経緯を教えてください。

香川 北海道大学に在籍していた頃に、フィンランドで開催されたある研究集会で、応用系の情報数理学科を新設するという話を、城西大学の井手教授から聞いたんです。それでお誘いがあり、働かせていただくことになりました。その時点では、テコンドーのテの字もなかったんです。

そこから、どうVRテコンドーと出会ったんですか?

香川 城西大学に着任した昨年、たまたまVRテコンドーの大会が城西大学で開催されていたんです。実際にプレーをさせてもらったときに「これは可能性があるな」と感じたんですよね。

具体的に、どんな可能性を感じたんでしょうか?

香川 サッカーや野球などと違って、そもそも競技自体が新しいですし、研究もまだされていない。さらにVRテコンドーはeスポーツという特性上、データが取りやすいですよね。なので、データサイエンスと相性のいいスポーツだと思ったんです。それに、フィジカルでなく、データ分析をくまなく行えたなら、たとえば華奢で小さな人でも、有段者に勝てる可能性も感じたんです。

サークル立ち上げの決め手は何だったんですか?

香川 城西大学には情報数理学科がありますので、データを使って研究するという土台は元々ありました。それに、VRテコンドーはそこまで広いスペースを要さない。なにより、VRテコンドーの楽しさや可能性を学生たちに伝えたいと思い、立ち上げることにしたんです。遅くとも今年の冬には正式にサークルとして立ち上がる予定です。

日本初の大学公認VRテコンドーサークルの設立、期待しています。今後、研究としてはどんな展開を考えていますか?

香川 まだ有効な戦術がはっきりしていない競技です。どんな角度で蹴ればダメージが大きいかとか、どこにどのくらいのスピードで蹴れば有効かなど、わからないことが多い。なので、まずは自分の体を動かしながら感覚をつかんで、それをデータ分析で裏付けをし、戦術を組み立てていこうと思っています。もし私たちのデータ分析がうまくいき、VRテコンドーがオリンピック種目になったのなら、うちのサークルからオリンピック選手も誕生するかもしれません。そんな未来も、真剣に考えているんですよね。

​​​​城西大学が見据える、VRテコンドーの未来。​ 

この日の会場には、全日本テコンドー協会理事で、VRテコンドー委員会委員長を務める鳥越恒一さんの姿もありました。かつては数々の大会で優勝を果たし、日本代表も経験。そんな鳥越さんもまた、城西大学の取り組みに期待を寄せます。

鳥越恒一さん
1973年生まれ、福岡県出身。現役時代は全日本選手権優勝や日本代表などを経験。オリンピック選考委員会を勤めた経験も。テコンドー護心会・代表師範でもある。

「日本の大学では初となるVRテコンドーサークルなので、全力でサポートしていきたいと思います。普及のフックにもなりますし、どういう活動になるのか、本当に楽しみにしています」(鳥越さん)

体験会のあとには、香川先生によるデータ分析の授業が行われました。VRテコンドーがなぜ情報数理学科の研究テーマになり得るのか、データサイエンスとスポーツがどう結びついていくのか。専門用語をかみ砕きながらの説明に、真剣な表情でうなずく高校生の姿も見られました。

実際に体を動かしたあとだからこそ、香川先生の話すデータの話も、腑に落ちている様子。体験と座学、両方を通して初めてVRテコンドーの奥行きが伝わる、そんな時間になっていました。

情報数理学科での研究、大学初の公認サークル、そして全日本テコンドー協会との連携。城西大学は、普及・教育・研究という三つの面から、このアジア競技大会公式種目に本気で取り組んでいます。まだ戦術もデータも整っていない黎明期にあるからこそ、そこに関わる学生や研究者にとっては、大きな伸びしろが残された競技です。

この小さなサークルが、ゆくゆくは城西大学の名を世界に知らしめるサークルになることも、夢ではないかもしれません。

このたび、NHKの番組「おはよう日本」にて、VRテコンドー部を取材いただきましたのでご案内いたします。

放送予定は以下の通りです。

【番組・放送情報】
・番組名:NHK総合「おはよう日本」
・放送日時:10月14日(月)7:20〜7:30(予定)

ぜひご覧いただけますと幸いです。

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