ミニワークショップ, 多変数反応拡散系の数理とその周辺
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日時:2015年12月25日(金) 14:00 - 12月26日(土) 13:30
神戸大学海事科学部、深江キャンパス 4 号館 4207 教室
目的:
3変数系以上の反応拡散系において、2変数系との違いを探ることを目的とします.
反応拡散系の研究は、理論、シミュレーション、実験など多岐に渡る面がありますので、
それぞれの専門分野の方々から2変数とは違う多変数系の話題を提供して頂く予定です.
暫定プログラム(敬称略)
12月25日(金)
14:00 - 15:00 坂元国望 (広島大学)
3変数反応拡散系における Turing 不安定化
15:10 - 16:10 近藤滋 (大阪大学)
反応拡散による安定なパターン形成原理の一般化
16:20 - 17:20 藤間真 (桃山学院大学)
Two-dimensional traveling waves arising from planar front interaction
in a three-species competition-diffusion system
17:30 - 18:30 総合討論 (司会 小川知之・明治大学, 佐藤純・金沢大学)
12月26日(土)
10:00 - 11:00 秦重史 (海洋研究開発機構)
ネットワーク上の多変数反応拡散系におけるパターン形成
11:10 - 12:10 池田榮雄 (富山大学)
2種類の3変数系の理論的考察
12:20 - 13:30 総合討論 (司会 小川知之・明治大学, 佐藤純・金沢大学)
組織委員: 栄 伸一郎, 桑村 雅隆
講演要旨:
坂元 国望:
講演題目:3変数反応拡散系における Turing 不安定化
講演要旨:
3変数反応拡散系における Turing 不安定化は, 2変数系とは
異なる様相を示す場合がある.本講演では、3変数系における
Turing 不安定化を, その不安定部分系のタイプによって分類する
ことにより, 3変数系特有の不安定化と2変数系に類似する不安定化
に仕分けることを試みる. この視点から眺めると, 2変数系における
Turing 不安定化の特徴が明瞭になると思われる.さらに, 非局所性
効果と Turing 不安定化の関連, 領域境界上での相互作用と Turing
不安定化の関連, 等について考察する.
近藤 滋:
講演題目:反応拡散による安定なパターン形成原理の一般化
講演要旨:
我々は, これまで魚類の縞模様を対象に, 模様パターン形成原理を調べてきた.
その結果, ゼブラフィッシュの縞模様は,
① 2種類の色素細胞間の相互作用によって起きること,
② 相互作用は細胞が延ばす突起によって伝えられる事,
③ 突起の長さを考えに入れると activator-inhibitor 系と相同の仕組みであること,
を発見した.つまり, 現実の生物に於いては, 「拡散」を使わずにTuring patternを
作っていたことになる.実験生物学に於いて理論モデルを利用する時には,
通常, 分子細胞レベルの原理が解っていることは無いので, パターン形成をモデル化する時に,
一律に, クラシカルな反応拡散系を使う事は望ましくない.もっと一般化された,
シグナル伝達の様式に依存しないモデルの方が利用しやすいだろう.
今回の講演では, シグナル伝達系に依存しないメタモデルを紹介し, その性質等について,
参加者の皆さんと議論したい.
藤間 真:
講演題目:Two-dimensional traveling waves arising from planar front interaction
in a three-species competition-diffusion system
講演要旨:
競合しながら拡散する生物系をモデル化した反応拡散系において,
2変数系では存在しない3変数系特有の二次元的進行波解とそれを生み出す
一次元進行波解の相互作用について紹介する.これらは, 在来2種が共存する
ことがないほど強く競合している状況に弱い外来種が侵入した場合に競争緩和共存が
おきるかを数理的に研究する中で発見されたものである.特に, 2種系でも
存在する一次元進行波と3種系特有の1次元進行波が, 2次元的に角度を持って
相互作用をした場合に発生する2次元的進行波の, 形状や速度の角度依存に
焦点をあてて紹介することにより, ワークショップの目的に貢献することを目指す.
秦 重史:
講演題目:ネットワーク上の多変数反応拡散系におけるパターン形成
講演要旨:
反応拡散系は連続媒質上において精力的に研究が行われてきたが,
近年,媒質の構造がダイナミクスに大きな影響を与えることが明らかになった.
特に,一般の媒質構造を記述する複雑ネットワーク上における反応拡散ダイナミクスは
多様な応用の可能性から注目を浴びつつある.本講演では,上記に関するレビューを
行なうとともに,ネットワーク上の多変数反応拡散系について講演者が行なった
研究結果を紹介する.
池田 榮雄:
講演題目:2種類の3変数系の理論的考察
講演要旨:
有害藻類開花(Harmful Algal Bloom)現象のモデルとして
2種餌食1捕食モデルを考え,非一様解の解構造を調べる.
2種では不安定である解が3種モデルでは安定化することを示す.
もう1つのモデルとして,3変数FitzHugh-Nagumo方程式を考え,
進行波解の分岐において2種系との違いを探る.