城西大学 薬学部 皮膚生理学研究室

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研究内容

城西大学薬学部薬科学科皮膚生理学研究室/城西大学大学院薬学研究科皮膚生理学講座では,化粧品や化粧品有効成分(生理活性成分)が皮膚の中に入った時に,皮膚の中で起こっている現象を生物学的・分子生物学的な手法で明らかにすることを目的に研究を行っています。また、化粧品開発にかかわる基礎的な製剤学的検討や構造化学なども研究対象です。以下に,研究内容を説明します。

1. 角層バリア機能に対するスフィンゴミエリンの役割

Tokudome, Uchida, et al., J. Liposome Res. (2010)
Tokudome, Jinno, et al., Skin Pharmacol. Physiol. (2011)
Tokudome, Endo, et al., Skin Pharmacol. Physiol. (2014)
Nomoto, Tokudome, Glob. Dermatol. (2015)
Itaya and Tokudome, Biochem. Biophys. Res. Commun. (2016)
Nomoto, Tokudome, et al., Exp. Dermatol., (2018)

皮膚バリア機能は角層細胞間脂質が重要であることがわかっています。その中でもセラミドは重要な構成成分であることは多くの研究者から報告がされています。角層中のセラミドはグルコシルセラミドとスフィンゴミエリンを前駆物質として合成されます。

城西大学薬学部薬科学科皮膚生理学研究室では,今までに,三次元培養皮膚にセラミドの前駆物質(スフィンゴミエリン、グルコシルセラミド、スフィンゴシンなど)を適用することで角層中のセラミドを増加させること,また,そのメカニズムとしてセラミド生成代謝関連遺伝子の発現レベルが変動することを報告してきました。

これらの結果より,城西大学薬学部薬科学科皮膚生理学研究室では表皮中のスフィンゴミエリンの皮膚バリア機能に対する影響に着目して研究をしています。

本研究では,セラミドからスフィンゴミエリンを合成する唯一の酵素であるスフィンゴミエリン合成酵素を表皮特異的に欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を用いて,対照マウスと総合的に比較検討することで,スフィンゴミエリンの皮膚バリア機能に対する役割の一端を明らかにすることを目的としています。また,その成果はアトピー性皮膚炎や老人性乾皮症の根治療法への手がかりとなる可能性があると考えています。もちろん,セラミドやバリア機能の低い皮膚に対する化粧品開発にもこの研究は活かされるものと思います。

すでに、対照マウスと比較してノックアウトマウスの皮膚中セラミドやスフィンゴミエリン含量は低下していること,バリア機能は悪化していることを明らかにしてきました。この動物をもちいてバリア機能とスフィンゴミエリンの関係を明らかにするため日々研究を行っています。

2. ポリイオンコンプレックス法を用いた新規化粧品製剤の提案

Shigefuji and Tokudome, Materialia, (2020)
Tokudome, Komi, et al., Sci. Rep., (2018)

皮膚は外部からの異物の侵入を防いだり,体内からの水分蒸散を防ぐことからヒトが地上で生きる上で極めて重要な組織(臓器)とされています。化粧品などを皮膚の外から適用しても,角層バリアによって十分量を皮膚内に浸透させることは困難とされます。一般的に,皮膚の中に入りやすい化合物は,(1)分子量が小さいこと,(2)適度な脂溶性があること,などが挙げられます。分子量の境界は約500とされていて,経皮吸収研究者にとっては良く知られたルールがあります(500ダルトンルールと呼ばれています)。皮膚は脂質で覆われているので,水溶性の化合物よりも脂溶性の化合物のほうが馴染むことは容易に想定できると思います。

化粧品の中には保湿などを期待して,ヒアルロン酸が配合されていますが,一般的に使用されているヒアルロン酸は分子量が100万以上です。そして,水溶性の高い化合物です。一般的なルールを考えると,塗布しただけでは皮膚の中に浸透させることは困難です。市販の化粧品に含まれるヒアルロン酸は皮膚の表面に残り,皮膚の上で保湿することで有効性を示すことが想定されます。皮膚の上で保湿することも非常に重要だと思われます。

紫外線の暴露や加齢で皮膚内のヒアルロン酸が減少して,しわを形成させることが多くの研究者から報告されています。皮膚内のヒアルロン酸は皮膚の深部に存在する真皮に多くあるので,減少したヒアルロン酸を真皮に届けるためには多くの困難があります。それを解決する方法としてヒアルロン酸注入,コラーゲン注入,イオン導入,マイクロニードルを用いた方法などがもちいられてきました。しかし,これらの方法は,皮膚に物理的な力を加えるので,あまり良い方法ではありません。

そこで城西大学薬学部薬科学科皮膚生理学研究室では,遺伝子導入などに用いられているポリイオンコンプレックス法で水溶性のアニオン性(負電荷)を持つ化合物のヒアルロン酸を粒子化し,経皮適用を試みました。今回使用したヒアルロン酸は分子量120万のものを蛍光標識したものを用いました。以下、ヒアルロンナノ粒子(HANP)とします。蛍光標識したHAと蛍光標識したHANP水溶液を全層皮膚に適用し,一定時間経過後に凍結切片を作成し,蛍光顕微鏡解析を行いました。残念ながら,蛍光HA、蛍光HANPは皮膚内に浸透しないことがわかりました。そこで,ある油脂存在下で,蛍光HAまたは蛍光HANPを乳化し,同様の実験を行ったところ,HAは皮膚に浸透しませんでしたが,HANPは皮膚深部に送達されることがわかりました。現在は、HANPの皮膚浸透促進メカニズムに関して検討を行っています。

最近、ヒアルロン酸をナノ粒子化することで非粒子ヒアルロン酸と比較し、ケラチンタンパクとの親和性が下がり、角層細胞間脂質への親和性が増加することが示唆される結果が得られました。また、顕微鏡観察ではその透過ルートが異なることが示唆されました(Materialia誌に掲載)。

3. 経皮吸収を促進する技術やその素材の開発

Tokudome and Tsukiji, Colloids and Interface (2020)
Tokudome, Nakamura, Itaya, et al., J. Pharm. Pharm. Sci., (2015)

皮膚は外部からの異物の侵入を防いだり,体内からの水分蒸散を防ぐことからヒトが地上で生きる上で極めて重要な組織(臓器)とされています。化粧品などを皮膚の外から適用しても,角層バリアによって十分量を皮膚内に浸透させることは困難とされます。一般的に,皮膚の中に入りやすい化合物は,(1)分子量が小さいこと,(2)適度な脂溶性があること,などが挙げられます。分子量の境界は約500とされていて,経皮吸収研究者にとっては良く知られたルールがあります(500ダルトンルールと呼ばれています)。皮膚は脂質で覆われているので,水溶性の化合物よりも脂溶性の化合物のほうが馴染むことは容易に想定できると思います。

従いまして、化粧品のいくつかは有効成分が皮膚の中に浸透しておらず、皮膚表面に乗っているだけのものもあるかと思われます。城西大学薬学部皮膚生理学研究室では、化粧品の有効性を向上させるために、皮膚中に化粧品の有効成分を皮膚に害(刺激)を与えずに浸透させる技術の開発や、それを実現できる素材の開発を行っています。この研究は、効果の期待できる化粧品開発につながるために期待が大きいものです。

4. 皮膚の老化や生体反応における細胞の構造変化

Yokota and Tokudome, Skin Pharmacol. Physiol. (2016)
Yokota, Sekita, Tokudome, et al., Ann. Dermatol., (2017)
Yokota, Masaki, Tokudome, et al., Dermato-Endcrionol., (2017)
Yokota and Tokudome, Biol. Pharm. Bull. (2015)

城西大学薬学部薬科学科皮膚生理学研究室では,老化や糖尿病患者の皮膚の構造などについて研究を行っています。透過皮膚を実験的に引き起こし,その角層の物性などの評価を行いました。糖化皮膚は水溶性物質の化合物皮膚浸透を増加させました。また,糖化皮膚角層の脂質組成を解析したところ,セラミドやコレステロール含量は変化しませんでしたが,飽和脂肪酸が糖化誘導により有意に増加しました。また,糖化誘導での角層脂質組成で作成したリポソームの流動性を確認したところ,糖化により有意に流動性が促進しました。流動性が高いことは薬物の皮膚透過を増加させることが想定されます。糖化誘導によって,角層中の脂肪酸が増加し,その結果として角層の流動性が増すことで,化合物の皮膚浸透が増加することが想定されます。このように,老化や糖尿病患者などの皮膚は水溶性化合物の皮膚浸透性を変化させる可能性があることを明らかにした興味深い結果であると思われます。

5. 生理活性物質の皮膚や皮膚細胞に対する効果

 さまざまな生理活性物質が皮膚や皮膚細胞にどのように影響するのかを検討し,その結果が,化粧品やその他製品開発に役立てることを目指した研究をしています。

5-1. 超低分子ヒアルロン酸の有効性に関する検討

Kage and Tokudome, Arch. Dermatol. Res., (2016)
Kage and Tokudome, Int. J. Pharm. Sci. Res., (2016)
Kage, Tokudome, et al., Int. J. Cosmet. Sci., (2014)
Matsunaga, Fujiwara, Kage, Tokudome, et al.,S IFSCC Magazine (2012)
Kage, Tokudome, et al., Arch. Dermatol. Res., (2013)
Kage, Tokudome, et al., J. Jpn. Cosmet. Sci. Soc., (2013)

ヒアルロン酸は分子量120万をこえる水溶性高分子で,細胞分化や線維化に作用していることが報告されていますが、皮膚内に送達させることは困難です。そこで,ヒアルロン酸の最小単位である4糖からなるヒアルロン酸(以下HA4)の皮膚浸透性や効果に関しての検討を行っています。最初にHA4が皮膚を透過するかを検討しました。HA4は受動拡散で皮膚を透過すること,UVA照射マウスにHA4を適用することでUVAで起こった皮膚障害を改善することがわかりました。ヒト線維芽細胞や,ヒト正常表皮角化細胞に対しては,コラーゲン,ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現量の増加,CD44を介した分化誘導,セラミド生成遺伝子量と含量の増加などを報告し,HA4は塗布するだけで,皮膚内に浸透し,皮膚内で良い効果を示すことがわかりました。城西大学薬学部薬科学科皮膚生理学研究室では,これらの知見をもとにして,化粧品への応用を期待し,国内外の化粧品企業との共同開発を行っています。

5-2. 生理活性物質の有効性に関する検討

その他,セラミドや大豆たんぱくなどの皮膚傷害に対する改善効果などを検討しています。これらはすべて,企業(多くは化粧品企業)との共同研究によって商品開発に絡んだ研究で,これらの研究の多くが化粧品などの商品に応用されています。最近は新規の美白素材の水溶性がメラニン生成に影響することを明らかとしました。最も最近では生体に存在する環状ホスファチジン酸が皮膚の生まれ変わりやバリア機能に対して効果があることを明らかにしました。また、乳酸菌生産物質がバリア機能、皮膚の保湿に対して良い効果がありそうなことを細胞レベルで確認しました。

Otsuka, Tokudome et al., Skin Pharmacol. Physiol. (2020)
   Saito, Kage, Tokudome, Biol. Pharm. Bull. (2020)
Tokdome, Hoshi et al., Cosmetics (2020)
Tokdome, Nutrients (2018)
Tokdome, Masutani et al., Nutrients (2017)
Kitazawa, Kano, Tokudome, et al., J. Jpn. Cosmet. Sci. Soc., (2015)
Tokudome, Nakamura, et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., (2014)
Tokudome, Kage, et al., J. Nutr. Food Sci. (2012)
Tokudome, Nakamura, Kage et al., Int. J. Food Sci. Nutr., (2012)

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