22章 微分方程式(連立方程式)

1. 放物運動
水平方向には前章の第1節で学んだ等速運動、垂直方向には等加速度運動をする動点の動きを考えてみましょう。
例えば、x 軸方向に一定の速度2、y 軸方向に一定の加速度 -9.8 で動く動点 P の時刻 t における位置を (x(t),y(t)) と表すと

x'(t)= 2、 y''(t)= -9.8

が成り立ちます。初期条件 x(0)=0, y(0)=0, y'(0)=9 を満たす解を求め、シミュレーションを行ってみましょう。

>with(DEtools):

>dsolve({diff(x(t), t) = 2, diff(y(t), t, t) = -9.8, x(0) = 0, y(0) = 0, (D(y))(0) = 9}, {x(t), y(t)})

>plot([rhs(op(1, %)), rhs(op(2, %)), t = 0 .. 2], scaling = constrained)

>animate(pointplot, [[rhs(op(1, `%%`)), rhs(op(2, `%%`))]], t = 0 .. 2, scaling = constrained, symbol = solidcircle, symbolsize = 40)

>display({%, %%})

と入力し描かれたグラフをクリックして表示されるメニューバー上のアニメーション再生ボタンを クリックすると、アニメーションが始まります。



2. 生態系(ロトカ・ボルテラ方程式)
ある2種類の生物種X,Yの時刻tにおける個体数がそれぞれx(t),y(t)と表せ、xとyの変化が次の微分方程式(系)に従うとしましょう。



ここで、a1とa2はそれぞれXとYの種内の増殖率、b1とc2は種内の競争率を意味するとします。 また、c2とb1は種間相互作用から定まる定数とします。c1とb2がともに正の値のとき方程式は協調系とよばれ、ともに負のとき競争系、c1が正でb2が負のとき捕食者・被食者系とよばれます。例えば、a1=a2=b2=c1=1, b1=c2=0のとき、すなわち、

x'=x(1+y), y'=y(1+x)


の解曲線を xy 平面上に図示して、生態系の時間変化を調べてみましょう。

>with(DEtools):

>de1:=[diff(x(t),t)=x(t)*(1+y(t)),diff(y(t),t)=y(t)*(1+x(t))]

>ini1:=seq([x(0)=0.2*i,y(0)=0.9-0.2*i],i=1..4)

>DEplot(de1,[x(t),y(t)],t=0..30,[ini1],x=0..4,y=0..4,stepsize=0.1)


実習22.1
ロトカ・ボルテラ方程式系において、次の場合に解曲線を図示しなさい。
(1)a1=a2=b1=c1=c2=1
(2)a1=a2=b2=c1=1,b1=c2=-1
(3)a1=a2=1,b1=b2=c1=c2=-1
(4)a1=a2=b1=b2=c2=-1,c1=1
(5)a1=b2=1,b1=c2=0,a2=c1=-1

[正解例]



3. 熱対流 (ローレンツ方程式)
上下の平行な壁の間の液体に対し、下の壁の温度が上の壁の温度より十分大きいときに起こる対流運動はローレンツ方程式



により記述されます、ここで、σ=10, r=28, b=8/3 のとき、カオス現象が観察されることが知られています。Mapleを用いて、このときの初期条件x(0)=y(0)=z(0)=10を満たす方程式の解の拳動を調べて みましょう。

>de2:=[diff(x(t),t)=-10*(x(t)-y(t)),diff(y(t),t)=-x(t)*z(t)+28*x(t)-y(t),diff(z(t),t)=x(t)*y(t)-8/3*z(t)]

>DEplot3d(de2,{x(t),y(t),z(t)},t=0..50,[[x(0)=10,y(0)=10,z=(0)=10]], scene=[x(t),y(t),z(t)],x=-50..50,y=-50..50,z=0..50,stepsize=0.01)


注意 解は不規則に振舞うことが知られています。また、解の極限集合はローレンツアトラクターとよばれています。


実習22.2 初期条件を変えてローレンツ方程式の解を求め図示せよ。

[正解例]