月岡芳年

風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間妻君之風俗

明治21年(1888)
大判錦絵三十三枚揃のうち
寛政(1789~1801)から明治(1868~1912)に至る、に至る、三十二の様々な女性風俗を描いた揃物。 三十二図に目次を加え、全三十三枚となる。 三十二相とは仏が備える三十二の優れた姿形をいい、これを美人の容貌としぐさにおきかえ、 「何々(した) そう」という気持ちなどを表現している。 歌川国貞(三代歌川豊国)や豊原国周の同趣向の作品に影響を受けたものだが、芳年は綿密な筆致で表情の機微をより現実的に描き出した。 歌川派を継承しつつも江戸風とは違う、明治期の浮世絵美人画の傑作である。このシリーズは人気があり、何度も再版されたようで、色の異なる後摺も散見される。
西洋風の最新のファッションに身を包み、花菖蒲を背景に颯爽と歩くのは明治年間の若奥様。薔薇の花のついた帽子をかぶり、胸元に青いリボンの付いたボタンと襟のあるドレスを着て、手には洋傘を携えている。こうした格好は、華族や高級官僚の妻、令嬢といった上流階級に属するわずかな女性たちだけができた。

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