葛飾北斎

詩哥写真鏡 少年行

天保4、5年(1833、34)頃
長大判錦絵
「詩哥写真鏡」は、和漢の著名な詩歌に想を得た揃物で、10図が知られる。「真を写」した鏡物(=歴史物)とあるが、実際は北斎の卓越した想像力が作り出したファンタジーである。本図は、唐の詩人、崔国輔(さいこくほ)の五言絶句、珊瑚の鞭を忘れ白馬がおごって進まないので柳の枝を鞭としたと詠う「少年行」に取材。竪長の大きな画面を巧みに使い、蛇行する道と水辺のぼかしで奥行きを出し、ベロ藍を多用した強い色調のダイナミックな作品である。傑作《冨嶽三十六景》で知られる葛飾北斎は、自ら「画狂老人」と記し森羅万象を描きつきした代表的浮世絵師。森屋治兵衛は幕末の大版元だが、良質の彫師を抱えられず、「森治の悪彫り」としても有名。

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