王者であり続けるために変わり続ける。女子駅伝部、新体制の挑戦。
- Photo
- Kentaro Hisadomi
- Text
- Keisuke Kimura
- Edit
- Shinya Kosaka / BOATship
【CROSS TALK】 王者であり続けるために変わり続ける。女子駅伝部、新体制の挑戦。
2026年4月、女子駅伝部の新監督に就任した佐藤信之さん。競技者として実業団で研鑽を積み、引退後は大学の駅伝チームで指導者としてのキャリアを積んできました。そんな彼が引き受けたのは、昨年2冠を達成した、王者チームの継承というミッション。新体制の現在地とこれからを、主務の藤田阿生さんとともに語ってもらいました。
佐藤信之 / 女子駅伝部監督
1972年生まれ、愛知県出身。高校、大学、実業団と選手として活躍したのち、2006年から指導者の道へ。豊田紡織でランニングコーチ・ヘッドコーチ・監督を経験し、その後は女子実業団チームのスカウト担当や監督代行、亜細亜大学陸上競技部の監督などで手腕を発揮。2026年4月1日より城西大学女子駅伝部監督に就任。
藤田阿生(経営学部マネジメント総合学科4年)
千葉県出身。高校まで陸上選手として競技に取り組んでいたが、城西大学では主務としてチームを支える側に転身。3人のマネージャーをまとめるリーダーとして、練習記録や遠征手配など幅広い業務を担う。
「すごいチームだ」と見ていた側から、率いる側へ。
まずは佐藤監督の就任の経緯から教えていただけますか。
佐藤 昨年12月に知人から連絡があり「城西大学女子駅伝部の監督をやらないか」と声をかけてもらったのが最初です。ちょうどその頃、別の実業団のスカウトとして「富士山女子駅伝」に視察に行っていて、城西大学の走りを目の当たりにしました。一度は抜かれたものの、抜き返して優勝した。「すごいチームだな」と感心しながら見ていましたね。
その時点では、まだ外から見る立場だったんですね。
佐藤
はい。まさか自分が監督になるとは思っていませんでした(笑)。そこから年が明けて、1月中旬に正式なオファーをいただきました。
弱いチームを立て直すのとは逆で、チャンピオンチームを引き継ぐというのは、プレッシャーもあったかと思います。
佐藤
競技者としても指導者としても、プレッシャーのかかる場面は何度も経験してきたので、そこへの怖さはありませんでした。それよりも、以前女子チームの指導に関わっていた際、自分の未熟さを痛感した経験があって。だから今回は、そのリベンジをする気持ちの方が強かった。悔いを残したくない一心で、引き受けることにしました。
藤田さんは、新監督就任をいつ知ったんですか?
藤田
今年の2月です。
そのときの率直な気持ちを伺いたいです。
藤田
正直、不安はありました。会ったことも話したこともなかったので、チームとちゃんと噛み合うのかなって。
実際に佐藤監督が就任されてから、その気持ちに変化はありましたか?
藤田
はい。佐藤監督は最初から選手に寄り添う姿勢を示してくださって、これまで積み上げてきたものも尊重してくれました。そうした姿勢を感じるうちに、自然と「大丈夫だ」と思えるようになっていました。
佐藤
私も、まずは「選手を知る」ということを心掛けました。就任後すぐに、全員と1時間ずつ個人面談をしたんです。そこで誰もが「駅伝メンバーに入って優勝したい」と話してくれた。力強い言葉に身が引き締まりましたし、このチームで2冠を達成したいという思いがより強くなりましたね。
土台は変えない。でも、進化は止めない。
藤田さんから見て、前監督と佐藤監督の違いはどこに感じますか?
藤田
指導法も、選手との向き合い方も、距離感も、すべて違うと思います。だからこそ、佐藤監督らしいやり方でチームと噛み合っていければ、それが一番ですし、選手たちも監督の考えを理解しようとしている段階なので、時間が経てばチーム力は一層上がっていくと思っています。
そもそも佐藤監督は、城西大学の女子駅伝部をどう見ていたんでしょうか?


佐藤 外から見ていても、徹底的に「質」を重視する練習が徹底されているチームだと感じていました。実際に中に入っても、その印象は変わりませんでしたね。だからこそ、核となる練習は大きく変えていません。
具体的には、どんな練習なのでしょうか?
佐藤 インターバル走ひとつとっても、ただ本数をこなすのではなく、リカバリーの時間を短縮したり、設定ペースを上げたりして、実戦に直結するような負荷をかけるんです。その積み重ねが結果につながっている。変えなくていい部分は、変えないようにしていますし、これからはそこに私のエッセンスも加えられたらと思っています。
選手の体調やコンディションは、日々どのように把握されているんですか?
佐藤
朝練の体操が終わったら、マネージャーと話す時間を必ず設けていて、選手の変化を確認するのがルーティンになっています。また、練習後には選手全員が挨拶に来てくれるので、1日1回は必ず全員と言葉を交わす。その積み重ねで、選手それぞれのコンディションを把握するようにしています。
藤田
私も気づいたことや思ったことは、その都度監督に伝えるようにしています。選手と監督の間に入りながら、チームが動きやすくなるよう心がけているんです。
強さの秘訣は、日々の食事とフラットな関係性。
練習以外で、城西大学女子駅伝部の強さの理由はどこにあると思いますか?
佐藤
就任して驚いたのは、食事環境が充実していること。選手達は寮生活ですが、3食すべてを、城西大学女子駅伝部のOGであり、薬学部医療栄養学科出身の管理栄養士が作っているんです。遠征に行く際にも空港で食べるようにとおにぎりを用意してくれたり、遠征先で食事をする場所も事前にリサーチしてくれたり。そこまで徹底しているチームはなかなかないですよ。
藤田 たしかに、食事へのこだわりも日本一だと思います。普段は和食なんですが、木曜日の朝は特別にパンが出てくるんです。パンケーキやホットサンド、時には手作りの肉まんも出てきて、選手達の楽しみになっています(笑)。
チームワークの良さも印象的です。
藤田
私が入学した頃から、先輩後輩の関係はありながらも、みんなが意見を言える環境がありました。「こうしたらもっと強くなれるんじゃないか」という提案を下級生がしても、しっかりと受け止めてくれる。その文化は、今のチームにも引き継がれていると思います。
佐藤
課題は、長い区間を任せられる選手を育てることです。昨年は短い区間と中距離区間で勝ち切れましたが、さらに強いチームになるためには、長距離区間の強化が必要です。そして、一時的な強さではなく、継続して勝てるチームをつくっていきたいと思っています。
藤田 10月に「杜の都駅伝」、12月に「富士山女子駅伝」があります。去年の優勝メンバーが中心になりながら、チーム全体でどう勝ちにいくか。自分たちらしい答えを見つけながら、2冠を目指します。
佐藤 まずは、毎日の積み重ねあるのみです。健康で、安全に、一日一日をしっかり積んでいく。それしかない。でも、このチームなら必ずできると思っています。