城西生を見ていて最近思うこと 本文へジャンプ

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企業側から見た日本人大学生の価値

私が大学を出て大学院に進学した当時、約30年前になりますが、アジアでの日本人大学生の価値はかなり高かった時代でした。日本経済の国際競争力が抜きん出ていたことや他国の大学生の数がまだ少なかったことも理由に挙げられるでしょうが、多くの学生が授業や卒業研究に熱心に取り組んでいたため、知識や勉強方法を大学でしっかり修得して社会に出て行くことができたことが大きかったと思います。卒業して未経験の職種に就いても、自分の実力を十分に発揮し活躍することができたので、企業は彼、彼女らを貴重な即戦力と見なしていました。
 残念ながら現在では日本人大学生の価値は相対的に低下してしまいました。前任地で私は日本学術振興会や学生支援機構が後援している「東アジア諸国からの若手研究者招へい(
JENESYS)」の事業に広く関わって来ました。ネパールから2人、タイから4人、バングラディシュとフィリピンとシンガポールから1人ずつの若手研究者を3ヶ月間から最長で3年間も研究室に受入れて指導をしました。そこで受けた印象は、海外の大学生の方がはるかによく勉強するし、問題意識を持って授業や研究に臨んでいるという、巷の専門家の論評のとおりでした。実は、社会に出ていろいろな場面で必要とされる「洞察力」や「競争意識」は、このような学習態度から身につくことになります。従って、日本人学生と海外留学生のどちらが企業にとっての価値が高いのかは歴然としています。


学生、教員、企業: 互いに期待すること期待されること

日本の大学生が真摯に授業に取り組まないのは、アルバイトや友達との会話や課外活動やスマートフォンやSNSが理由なのでしょうか?実は、教授が一方的に喋るだけの授業や、ゼミの先生がほとんどお膳立てしてくれる卒業研究にあまり魅力が感じられないのが原因の一つかもしれません。あるいはいくら頑張って勉強をしても、多くの企業が採用の際に大学の成績を評価してくれない風潮自体に問題の根っこがあるのかもしれません。皆さんのそういった気持ちは分からないでもありませんが、だからといって勉強や卒業研究を疎かにすると、授業やゼミの充実度および世間の大学教育への信頼度がさらに降下するといった慢性的な悪循環に陥るということは容易に想像が付くでしょう
 私は、研究室の学生に「まじめに勉強と研究をやっていて良かった」と将来思っていただく為に、多くの労力と時間を費やしたいと考えています。そこで、配属直後に能率の良い就職活動に必要な「自己表現力」、「面接での心掛けとノウハウ」を重点指導します。次に企業が最も重視している「考える力(洞察力)」、「文章力」、「競争意識」が育成されるよう、研究とゼミを通して学んでいただきます。端的に言えば、1年間真剣に研究をした者ほど後からより多く報われる結果となることを第一目標として卒業研究とゼミを主催します。以上、簡単ですが、本研究室の基本方針とお考えください。