浮世絵講座開催報告
浮世絵講座〔テーマ:役者絵〕を開催しました
水田美術館は、9月3日(土)に浮世絵講座「役者絵の楽しみ―江戸の美男とブロマイド」を水田 三喜男記念館講堂を会場に開催しました。浮世絵講座は、長期休館中の美術館主催イベントのひとつで、浮世絵の主要テーマ「役者絵」「美人画」「名所絵・風景画」「武者絵」「戯画」「おもちゃ絵」について、各専門家の先生をお招きしてお話 頂く講座で9月から12月まで計5回が開催されます。
9月3日はその第一回目で、「役者絵」をテーマに藤澤茜先生(神奈川大学国際日本学部准教授、国際浮世絵学会常任理事)にリモート出演にてご講演頂きました。
役者絵や歌舞伎が現代の中でどのように面影を残し活用されているのかを事例を用いてご紹介頂き、役者似顔絵の変遷を概観、当館所蔵の写楽作品や、国政の作品もスライドで示しつつ、写楽画の特徴や他の絵師の役者絵とも比較して、眉、目、口といった役者絵を見る上でのポイントをお話下さいました。奥深い役者絵の魅力に会場やオンラインでご参加頂いた方からも多くのご質問と反響を頂く講座となりました。
また、講演後はミニワークショップ「写楽の顔でしおりづくり」コーナーで参加者の方にしおり作りを楽しんで頂きました。
水田美術館では本学が取り組む地域連携・地域貢献の一環として、地域の方々の学ぶ喜びや楽しさを促進する活動を、浮世絵を通じてこれからも行っていきます。
![]() 講座の様子@ |
![]() 講座の様子A |
![]() ミニワークショップ「写楽の顔でしおり作り」 |
■9月3日(土)浮世絵講座
「役者絵の楽しみ―江戸の美男とブロマイド」
講 師=藤澤 茜氏(神奈川大学国際日本学部准教授、国際浮世絵学会常任理事)
会 場=城西大学水田三喜男記念館講堂
参加人数=会場参加29名、オンライン参加26名
浮世絵講座〔テーマ:名所絵・風景画〕を開催しました
水田美術館は、10月1日(土)に浮世絵講座「名所絵の要件−広重作品から考える−」を水田 三喜男記念館講堂を会場に開催しました。浮世絵講座は、長期休館中の美術館主催イベントのひとつで、浮世絵の主要テーマ5つについて 各専門家の先生をお招きしてお話頂くもので、10月1日は第二回目「名所絵・風景画」をテーマに大 久保純一先生(国立歴史民俗博物館教授、町田市立国際版画美術館館長)にご講演頂きました。
名所絵・風景画が、いかしにして美人画や役者絵のように浮世絵の一大ジャンルとして確立されるに至ったのかその要因をあげ、そしてそれに後押しされる形で登場し人気となったのが、葛飾北斎の《冨嶽三十六景》であり、この《冨嶽三十六景》の流行により、浮世絵風景画(名所絵)は美人画、役者絵に次ぐジャンルとして確立、後に続く歌川広重や歌川国芳らの風景画作画を促す契機になったと話されました。
そして、講座のタイトルにもなっている広重の風景画(名所絵)作品を取り上げながら、広重が風景画に用いた手法や主題の選択、卓越した空間構成と空気遠近法や色彩の遠近法に加え、名所図会を巧みに利用する事で、広重自身の言葉で言うところの「写真(しょううつし)」の風景−つまりリアリティ感溢れる景観描写に特徴があると指摘されました。また、定型化された名所のイメージを視覚化する事で広く大衆に受け入れられ、結果、商品としての成功に繋がっていると述べ、広重作品の成功から導かれる名所絵の要件とは、@描かれた風景がもつリアリティー、A人々が名所景観に抱くイメージの重視であると結論づけ、本講座を締めくくりました。 質疑応答では会場およびオンラインから多くの質問がなされ、また、本講座ミニワークショップ「名所絵立体アートづくり」も楽しんで頂きました。
![]() 講座の様子 |
![]() 講師の大久保先生 |
![]() ミニワークショップ「名所絵立体アートづくり」 |
■10月1日(土)浮世絵講座
「名所絵の要件−広重作品から考える−」
講 師=大久保 純一氏(国立歴史民俗博物館教授、町田市立国際版画美術館館長)
会 場=城西大学水田三喜男記念館講堂
参加人数=会場参加28名、オンライン参加31名
浮世絵講座〔テーマ:美人画〕を開催しました
水田美術館は、10月8日(土)に浮世絵講座「美人画に恋して−ものがたる浮世絵−」を水田 三喜男記念館講堂を会場に開催しました。9月から始まった浮世絵講座は、長期休館中の美術館主催イベントで、浮世絵の主要テーマ5つ について各専門家の先生をお招きしてお話頂くものです。10月8日は第三回目「美人画」をテーマに 藤澤紫先生(國學院大學教授、国際浮世絵学会常任理事)にご講演頂きました。
前半は、藤澤先生が美人画に恋をしたきっかけから始まり、その後、浮世絵美人画の魅力について、@近世・近代における美人画の意味や呼称、A浮世絵美人画の系譜(錦絵期以降)、B小袖雛形本との関わり、C『都風俗化粧伝』(文化10〈1813〉年刊、大正12〈1923〉年までの約110年の間増刷されたロングセラー本)にみる美人、D春信の美人画作品から物語を考えるミニ遊び、という5つの項目からお話頂き、鈴木春信、喜多川歌麿、歌川広重の美人画の代表的な名手もご紹介下さいました。
後半では、当館コレクションを含む国内外にある浮世絵美人画の名品を豊富な図版とともにスライドショーで示して頂き、各作品を丁寧に読み解かれていきました。
藤澤先生の浮世絵美人画への熱い思いが終始伝わってくるお話に、会場およびオンライン参加者も熱心に耳を傾け、質疑応答では多くの質問が出るなど活気のある講座となりました。また、講座終了後には、ミニワークショップ「美人画で小物入れをつくろう」も楽しんで頂きました。
![]() 講座の様子@ |
![]() 講座の様子A |
![]() ミニワークショップ「美人画で作ろう小物入れ」 |
■10月8日(土)浮世絵講座
「美人画に恋して−ものがたる浮世絵−」
講 師=藤澤 紫氏(國學院大學教授、国際浮世絵学会常任理事)
会 場=城西大学水田三喜男記念館講堂
参加人数=会場参加25名、オンライン参加36名
浮世絵講座〔テーマ:武者絵、戯画〕を開催しました
水田美術館は、11月19日(土)に浮世絵講座「戦う浮世絵 笑う浮世絵−武者絵と戯画の世界」を 水田三喜男記念館講堂を会場に開催しました。9月から始まった浮世絵講座の第四回目となる今回の講座は、「武者絵」と「戯画」をテーマに日野 原健司先生(太田記念美術館主席学芸員)にご講演頂きました。
まずは一つ目のジャンル、武者絵についての話から始まり、江戸時代後期頃に人気画題となった武者絵が、実は菱川師宣の浮世絵初期の頃からも描かれていた事を述べられ、特に人々からの注目を浴びる事となった歌川国芳の武者絵を中心に、明治期の月岡芳年まで様々な武者絵作品を3つあげた鑑賞ポイントに沿ってお話されました。
続いて二つ目のジャンルとなる戯画については、武者絵でも名を馳せた歌川国芳がやはりこちらも得意としていたと述べられ、可愛い動物たちや器物を擬人化したもの、たくさんのものを集めて何かを形づくったもの、影絵や文字絵、世相を皮肉るものといったヴァリエーションに富んだ、笑いとユーモアに満ちた戯画の世界を豊富な画像とともにご紹介されました。
ダイナミックで迫力ある武者絵と、面白く可愛らしい戯画の魅力がたっぷり伝わるお話に参加者も耳を傾け、質疑応答においても多くの質問が出されるなど充実した時間となりました。
また、講座終了後には、ミニワークショップ「武者絵で卓上カレンダーをつくろう」も楽しんで頂きました。
![]() 講座の様子 |
![]() 講師の日野原先生 |
![]() ミニワークショップ 「武者絵で卓上カレンダーをつくろう」 |
■11月19日(土)浮世絵講座
「戦う浮世絵 笑う浮世絵−武者絵と戯画の世界」
講 師=日野原 健司氏(太田記念美術館主席学芸員)
会 場=城西大学水田三喜男記念館講堂
参加人数=会場参加28名、オンライン参加32名
浮世絵講座〔テーマ:おもちゃ絵〕を開催しました
水田美術館は、12月3日(土)に浮世絵講座「おもちゃ絵 あれもこれも」を水田三喜男記念館講 堂を会場に開催しました。9月から始まった浮世絵講座の最終回となる第五回目の講座は、「おもちゃ絵」をテーマに新藤茂先生(UKIYO-E PROJECT Adviser、国際浮世絵学会常任理事)にご講演頂きました。
冒頭は、嘉永初期頃からおもちゃ絵が盛んになり始めたという事に触れ、講師が用意したスライドから「おもちゃ芳藤」とも呼ばれた一鵬斎(歌川)芳藤《新板かたち凧づくし》(嘉永2年〈1849〉)をはじめ、歌川幾英《しん板さかなつくし》(明治9年〈1876〉)、歌川重政《新板猫つくし》(慶応3年〈1867〉)、歌川芳艶《しんばんかうはこづくし》(明治9年〈1876〉)などのおもちゃ絵を紹介。その後は、細部を拡大してご覧頂けるよう画像表示に切り替えて、猫のおもちゃ絵や影絵、組上絵について、講師ご所蔵作品などを中心に、各作品の要所を拡大しながら細かく解説されました。また、組上絵については、組み上がった様子が描かれた錦絵作品も紹介し、組上絵がどのような形で人々の生活の中で親しまれ、楽しまれていたのかをお話されました。その他、歌舞伎役者や美人の様々な髪型を付け替えたり、衣装を着せ替えたりするおもちゃ絵も紹介。講座タイトルにもある通り、「あれも、これも、みんな、おもちゃ絵」というテーマのもと、様々なおもちゃ絵をたっぷりご紹介され、時間もあっという間に過ぎました。
また、会場入口付近には当館所蔵組上絵4点の複製版組立完成品の展示を行い、参加者は実際に組み上がった状態をご覧頂きつつ、講座終了後に行うミニワークショップ「芝居小屋を組み立てよう」にも一生懸命に挑戦するなど充実した最終回の講座となりました。
![]() 講座の様子 |
![]() 講師の新藤先生 |
![]() 新藤先生ご所蔵のおもちゃ絵 「新板おもちゃ絵づくし」 明治17年(1884) |
![]() ミニワークショップ |
![]() 当館所蔵組上絵の複製組立品の展示 |
■12月3日(土)浮世絵講座
「おもちゃ絵 あれもこれも」
講 師=新藤 茂氏(UKIYO-E PROJECT Adviser、国際浮世絵学会常任理事)
会 場=城西大学水田三喜男記念館講堂
参加人数=会場参加29名、オンライン参加24名