BCAA(分岐鎖アミノ酸)の効果とは?EAAとの違いを解説!

健康・医療
大竹一男

BCAA(分岐鎖アミノ酸)とは?

BCAAとは、Branched Chain Amino Acidの略で、文字通り分岐した鎖を持つアミノ酸のことで、分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸と一般的に呼ばれています。

アミノ酸は全部で20種類ありますが、そのうちのバリン、ロイシン、イソロイシンの3つをまとめてBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼んでいますよ。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)の効果について 

筋力アップ

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は筋肉中に最も多く存在するアミノ酸です。

最も手軽に効率的にBCAA(分岐鎖アミノ酸)を摂る方法は、BCAA(分岐鎖アミノ酸) の飲料でしょうね。

一般に血液中のアミノ酸の濃度が高まると、筋肉の細胞内でタンパク質合成も活発になり、逆にアミノ酸濃度が低下すると筋肉中のタンパク質は分解されてしまうので、これらのドリンクを意識して摂るようにして筋トレすると、摂らない場合よりもはるかに効率的に筋力アップにつながると思いますよ。

運動パフォーマンスの向上

BCAA(分岐鎖アミノ酸)の筋肉における機能として、大事なことを2つ覚えておいてください。

一つは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)が筋肉中のタンパク質の「原料」であること、もう一つは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)が運動時に「エネルギー源として利用・消費される」ということです。

つまり筋力アップの項でも説明しましたが、筋肉のタンパク質は常に合成と分解を同時に行っており、筋トレで筋肉を鍛えるほど筋肉は肥大して大きくなりますが、張り切りすぎて筋トレしすぎると、筋肉のタンパク質を分解して、その分解産物であるBCAA(分岐鎖アミノ酸)がエネルギー源として利用されてしまいます。

筋肉をたくましく鍛えようと、張り切って筋トレしているのに、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を補給しないまま筋トレを続けていたら自分の一生懸命鍛えた筋肉を溶かしてエネルギー源であるBCAA(分岐鎖アミノ酸)に変えていたということが起こってしまいます。

つまりこれは、タコが自分の足を食べて空腹をしのぐようなことが筋肉で起こっちゃったことを意味しています。これはとても皮肉なことですよね。

このように、例えば、サッカーやバスケットボールなどの激しいスポーツや持久力が必要なマラソンや駅伝など、比較的長時間の運動を行うと、筋肉内に貯蔵されているエネルギー源が枯渇してしまうため、その不足分を補うために、筋肉のタンパク質を分解してBCAA(分岐鎖アミノ酸)を消費し始めてしまいます。

ですから、運動パフォーマンスの向上を目的に運動を行う場合には、あらかじめ充分に筋肉内にBCAA(分岐鎖アミノ酸)を蓄えておくことと、不足したBCAA(分岐鎖アミノ酸)を運動後になるべくはやく段階で補給することが大切になりますね。

筋肉の疲労を軽くする

筋肉の疲労は、①エネルギー源であるグリコーゲンが枯渇すること②運動によって増加する乳酸による筋肉のpHが酸性化によって起こることが考えられています。

そのため、筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンが不足する前に、BCAA(分岐鎖アミノ酸)をタイミング良く補給することによって、筋肉内のBCAA(分岐鎖アミノ酸)がエネルギー源として消費されるのを回避して筋肉が分解するのを防げますから、結果的に中・長期的な視点でみると、BCAA(分岐鎖アミノ酸)の補給は運動している間の筋肉疲労の軽減につながりますね。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)とEAA(必須アミノ酸)との違いは?

20種類のアミノ酸について

タンパク質を構成するアミノ酸は20種類ありますが、体内で合成できるアミノ酸は11種類、体内で合成できず、食事やサプリメントなどから摂取する必要があるアミノ酸は9種類あります。

この9種類のアミノ酸を必須アミノ酸 (Essential Amino Acids)、略して EAA といいます。

ちなみに11種類の非必須アミノ酸は、NEAA (Non-Essential Amino Acids)といいます。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)とEAA(必須アミノ酸)の違い

EAA (必須アミノ酸)は、メチオニン、リシン、フェニルアラニン、トレオニン、ヒスチジン、トリプトファン、バリン、ロイシン、イソロイシンの9種類があり、BCAAは、バリン、ロイシン、イソロイシンですから、EAAの9種類のうちの3つがBCAAになりますね。

つまりBCAA(分岐鎖アミノ酸)は全てEAA(必須アミノ酸)に含まれているということです。

なぜBCAA(分岐鎖アミノ酸)が筋力アップや疲労軽減につながるかといいますと、筋肉の中のEEAの約40%がBCAA(分岐鎖アミノ酸)で占められているからなんですね。

つまり、BCAA(分岐鎖アミノ酸)は、筋肉のタンパク質の原料・素材となる(これを同化といいます)ことと、運動する際のエネルギー源にもなる(これを異化といいます)、2面性を備えたアミノ酸であることから、筋力アップ、運動パフォーマンス向上、筋疲労軽減に必要不可欠なアミノ酸なんですね。

どんな人がBCAA(分岐鎖アミノ酸)を摂るべき?

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は筋肉のタンパク質に多く含まれており、筋肉のタンパク質の「原料」として、または「エネルギー源として消費される」という2面性があることは説明しました。

ですので、激しい運動トレーニングをして筋力アップ(原料を増やす)と運動パフォーマンス向上(エネルギー源を増やして持久力アップ)を目的にしている人は積極的に摂る必要がありますね。

また私たちの筋肉の重さは、合計すると体重の約4割を占めますが、30代以降から年齢が上がるごとに少しずつ少しずつ体重に占める筋肉の重量は少なくなっていきます。

一般的には、30代の筋肉量は80代の筋肉量の約半分程度まで低下するといわれています。つまり50年間で50%近くも筋肉は減ってしまうのです。

これがいわゆる「寝たきり」の原因にもつながりますね。

もちろん個人差があり、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を含む良質なタンパク質を食事から摂取し、かつ定期的な運動習慣のある人ほど、筋肉量の低下を抑えることができますよね。

ですから、高齢の方は、なるべく加齢による筋肉量の低下を維持するために、適度な運動(特に骨や筋肉に衝撃を与えるジャンプやジョギングでもよい)を日常生活に取り入れることと、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を多く含む食事を積極的に摂ることが大事ですね。

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BCAA(分岐鎖アミノ酸)のいろんな疑問

BCAA(分岐鎖アミノ酸)を飲むタイミングは?

BCAA(分岐鎖アミノ酸)をドリンク等の飲料で摂ると、体内に吸収されるのに約30分程度かかります。

激しい運動を継続して行う場合で、運動パフォーマンス向上(エネルギー源を増やして持久力アップ)を目的とする場合では、運動する少し前に摂るのが良いですね。

また筋力アップを目的に運動している場合には、筋肉内のBCAA(分岐鎖アミノ酸)が消費されて筋肉のタンパク質が分解されないように、運動後なるべく早いタイミングで摂るのが良いですね。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)を飲みすぎるとどうなる?

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は食事中にも含まれている成分ですから健常な方であれば飲みすぎても大きな影響はないと考えられています。

注意しないといけないのは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)だけをたくさん飲みすぎてもほかのEAA(必須アミノ酸)がないと筋肉を作るタンパク質は合成できませんので、筋肉を肥大化したい場合にはアミノ酸をバランスよく含むプロテインやEAA(必須アミノ酸)をバランスよく含む食品も必要になりますね。

だからといってタンパク質だけを過剰に摂取すると、腎臓や肝臓に負担がかかりますので、過度な摂取は控えて栄養バランスの良い食事を心がけることが大切ですね。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は筋トレしない日でも飲んでいいの?

もちろん大丈夫です。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)はトレーニング後などは筋疲労からの回復・損傷した筋肉の修復などでたくさん消費されますが、筋トレしない日でも絶えず、筋肉は合成と分解を繰り返してますので、合成を促すためにも筋トレしない日もBCAA(分岐鎖アミノ酸)を運動しているときよりも少し減らし気味にして、補給しておくのはメリットがありますね。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)を含む食品・食べ物

BCAA(分岐鎖アミノ酸) は、鶏肉、牛肉、卵、大豆、まぐろ、かつお、あじ、サンマ、大豆、チーズなどに多く含まれています。

これらの食品は、なんとEAA(必須アミノ酸)も充分に含まれていますので、毎日の食事の中で、これらの食品を選択すると、より効率的にBCAA(分岐鎖アミノ酸)のみならずEAA(必須アミノ酸)も摂取することができますよ。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)はサプリで摂ってもいい?

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は食事からもサプリメントからも摂ることができます。

サプリメントの一番のメリットは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)が素早く小腸(の空腸)で吸収されるために筋肉に到着する速度を高める(約30分)ことでしょうか。

食事だと口の中でよく噛んで飲み込んで、胃や十二指腸で消化されてから小腸(の空腸)で吸収され、筋肉に到着するから結構時間がかかります(およそ数時間)。

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栄養学を学ぶ重要性

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は筋肉のタンパク質の主要な構成成分であること(同化)、BCAA(分岐鎖アミノ酸)自身もエネルギー源となること(異化)、9種類のEAA(必須アミノ酸)に属し、体内で作ることができないので食事から摂取する必要があること、加齢による筋委縮の予防に効果的であること、など多彩な役割を果たすことから、栄養学的視点からも重要な項目として位置付けられています。

そのためにBCAA(分岐鎖アミノ酸)のみならず、アミノ酸を学ぶ際には、化学的視点(構造式、合成経路、分解経路、変換経路)、物理学的視点(水溶性/脂溶性、酸性/塩基性かなど)、生物学的視点(体内での変換・代謝など)を踏まえて、ヒトへの応用(病気の予防、治療)につなげる架け橋となるのが薬学で学ぶ栄養学だと思います。

城西大学の教育の特徴

城西大学薬学部の大切にしている使命(ミッション)は、「薬に強い管理栄養士さん」と「栄養に強い薬剤師さん」を一人でも多く輩出することです。

だから薬学部には薬剤師を養成する薬学科 (6年制)管理栄養士を養成する医療栄養学科があります。

薬学科には、「基礎栄養学」、「栄養学」、「ライフステージ栄養学」、「医療栄養学」「調理加工学実習」といった栄養学に特化した講義や実習科目が配置されていたり、医療栄養学科には、「薬理学」、「薬物療法学」、「薬物食品作用学」といった薬学に特化した講義や実習科目が配置されています。

埼玉県内の総合大学として、城西大学はクラブ活動も盛んで駅伝選手をはじめ多くの学生アスリートが同じキャンパス内で切磋琢磨しています。

薬学科や医療栄養学科の教員の中には、学生アスリートに対して栄養学的なアドバイスをする「公認スポーツ栄養士」や「スポーツファーマシスト」の資格を持った教員も在籍しており、クラブチームとのコラボ研究も盛んです。

薬学部のカリキュラムには、運動生理学、運動栄養学、スポーツ医学などの講義・演習も受講することができます。

この記事を書いた人

大竹一男

・城西大学 薬学部 薬学科 准教授

・博士(薬学) ( 2003年04月   城西大学 )

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