地域活性化を目的としたまちづくりのユニークな成功事例や課題を解説

地域・社会
鈴木一生

日本は多くの課題を抱えていますが、なかでも地方の人口減少や高齢化は深刻度を増しています。都心部への人口流出が進む日本において、地域活性化を図ることはできるのでしょうか。

本記事では、地域活性化に向けたまちづくりの事例や、まちづくりに関わる仕事に就くための方法なども紹介します。

まちづくりとは

まちづくりとは、厳密な定義は存在しないものの、一般的には「地域住民の生活環境を改善し、持続的かつ魅力的な地域・コミュニティを創出するための活動」のことを指します。

まちづくりという言葉を聞くと、文字通り「街(市街地)を作ること」、すなわち都市計画のようなものを連想する方も少なくありません。駅や高層ビル、マンション、大型商業施設などを誘致し、都市としての機能をもたせることを都市計画とよびますが、まちづくりと都市計画は異なる概念です。

都市計画は新たに建物や設備、インフラなどを作ることを指す場合が多いですが、まちづくりは現在あるものを活用して進められるのが基本となります。

また、都市計画は国や自治体などが主体となってトップダウン型で進められることが一般的であるのに対し、まちづくりは地域住民や自治体、民間企業、非営利組織などが連携・協力しながら進めていくという違いもあります。

地域活性化に向けた地方の課題とは

まちづくりが注目されるようになった背景には、地方自治体がさまざまな課題を抱えていることが挙げられます。

人口減少

日本の多くの自治体では、県外への転出などによって人口減少の傾向が見られます。特に、就職や転職などを機に県外へ転出していくケースが多く、若い世代を中心に地元での就職を選ぶ人が減少しています。

この結果、地場産業や地域コミュニティの維持が困難になり、税収減少による地方自治体の財政悪化も引き起こします。

少子高齢化

人口減少だけでなく、経済的な問題などによって出生率そのものが低下し、高齢者人口の増加も進んでいます。

労働力人口が減少し地域の経済活動が衰退する一方で、高齢者向けのサービスやケアの需要が増大し、それを支える人手や資源が不足するという問題も生じています。

商店街・繁華街の衰退

人口減少と少子高齢化の進行にともない、地方の商店街や繁華街も衰退の一途を辿っています。地域全体が活気を失い、経済活動が縮小していくとともに、地元のライフスタイルや文化の喪失ももたらします。

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地域活性化に必要な取り組みや視点

地域の衰退を防ぎ活気を取り戻すためには、どういった視点のもとで取り組みが必要なのでしょうか。

地域の特性・特色を把握

まずは地域が抱える課題や問題を理解することと、地域ならではの特性や強みを把握することが第一歩となります。

衰退に悩む地域であっても、歴史や文化を掘り下げていくと他にはない特性や強みが見えてくるはずです。その地域にしかない観光資源や、古くから発展してきた産業などを知ることで、地域活性化に向けたヒントが得られるかもしれません。

地元住民との連携

まちづくりを通して地域活性化に取り組むうえでは、地元住民の協力が不可欠です。自治体や非営利組織、民間企業だけが取り組んだとしても、地元住民の理解が得られなければ地域活性化につながりません。また活性化に成功しても、それは一時的なものであり、持続的ではありません。そこで、たとえば地域で開催される交流会やイベント、さらにはオンラインツールなども活用しながら地元住民との連携・コミュニケーションを大切にし、常に住民と共に地域を活性化していく姿勢を保つことが重要です。

地域ブランディング

地域の特色や魅力を対外的に発信し、認知度を高めていくことを地域ブランディングとよびます。地域ブランディングにはさまざまな方法があり、たとえば地元企業と協力しながら地場産品の商品を開発したり、大規模なイベントを開催し地域外からの観光客を呼び込んだりする方法もあるでしょう。

マスコットキャラクターやキャッチフレーズなどを考案し積極的に発信していくことも地域ブランディングに有効な取り組みといえます。

地域活性化に成功したユニークなまちづくりの事例3選

さまざまな自治体が地域活性化に向けたまちづくりを行っていますが、具体的にどういった事例があるのでしょうか。参考になる3つの事例を簡潔に紹介しましょう。

1.ナイトエコタツ(長崎県雲仙市)

雲仙普賢岳のある長崎県雲仙市では、火山活動が活発であることから地熱地帯としても有名です。同時に、自然が豊かで澄み切った空気であることから、きれいな星空を鑑賞できる地域でもあります。

この2つの特性を活かし、地熱で暖をとりながら星空を鑑賞する「ナイトエコタツ」というイベントを実施し、まちづくりに取り組んでいます。

2.COLD HIDAKA(北海道日高市)

北海道日高町は道内でも寒さの厳しい地域として知られる地域です。寒い地域と聞くと、それだけで魅力が半減するイメージがありますが、これを逆手にとり、「タオル大回転」や「人間カーリング」など寒さを生かしたさまざまな競技を行う大会を実施し、ブランディングに成功しています。

3.戦国城跡巡り事業〜可児市の乱(岐阜県可児市)

岐阜県可児市は明智光秀生誕の地としても知られており、美濃金山城や薬王寺、大小さまざまな古墳など歴史的価値の高い文化財が数多く存在します。

このような特色を活かし、可児市では子どもから大人まで楽しめるチャンバラのイベントを開催し地域活性化につなげています。

学生がまちづくりに参加するメリット

まちづくりや地域振興と聞くと、自治体や企業などの一部の主体が中心となって方向性を決めるイメージをもたれがちですが、実際には誰でも参画することができるオープンな場といえます。

社会人はもちろん、学生でもまちづくりに参画することは可能で、塾生やインターン生を募集している自治体や地域も少なくありません。

学生時代からまちづくりに参画することで、さまざまな人との人脈が形成できるほか、問題解決に向けた論理的思考力や企画力を養うことにもつながります。

例えば、埼玉県川島町では、「かわじま☆未来塾」という取り組みが行われています。「かわじま☆未来塾」とは、学生や社会人から構成される塾生と自治体が協力して、未来に希望ある魅力的なまちづくりを行うための施策等について調査や研究を行うための団体です。実際に城西大学の学生も「かわじま☆未来塾」の塾生として、まちづくりに携わっています。

まちづくりに関心を持つ方は、近隣自治体のホームページなどを調査し、どのような団体がまちづくりに携わっているのか確認してみるのもおすすめです。

まちづくりに関わる仕事とは?

塾生やインターン生としてまちづくりに携わってきた学生のなかには、学校を卒業してからもまちづくりを続けていきたいと考える方もいるでしょう。

まちづくりは国や県などがトップダウンで行うことはほとんどなく、自治体や非営利組織、民間企業、住民などが中心となってボトムアップ型で進めていくケースが多いです。

その地域の特性や長所は地域住民でなければ分からないことも多く、一般的には知られていない魅力なども発信できるためです。

そのため、まちづくりを仕事にするのであれば、市町村などの職員として働くか、非営利組織などの団体、または、まちづくりに積極的に取り組んでいる民間企業などへ就職する方法があります。

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城西大学・城西短期大学で学べる「地域連携」

地域活性化に向けたまちづくりは、地域住民や自治体との連携が不可欠であり、ビジネスの創出や事業の運営にあたっても地域志向であることが求められます。

そこで、城西大学および城西短期大学では、「地域志向」の核として大学と地域との連携を推進する「地域連携センター」を設立しました。

「連携教育・研究推進プロジェクト(J-CLIP)」として、「高麗川プロジェクト」や「休耕地活用プロジェクト」、「特産品を利用した商品開発への協力」などさまざまな取り組みを実施し、地域課題の解決につなげています。

一方で、現代社会はグローバル化も進んでおり、地域志向だけでなく国際性もあわせもった人材が求められます。一見すると相反する概念に思われがちですが、城西大学・城西短期大学では、実社会で活躍している人々とともにグローバル視点をもった地域志向の人材教育に取り組んでいます。

まとめ

人口減少が進む日本において、地方自治体の衰退は大きな課題であり、待ったなしの状況にあります。まちづくりは国や県などによるトップダウンで行われるものではなく、市町村や地域住民、民間企業・非営利組織などがボトムアップで取り組んでいくことが大切です。

地元を活性化させるために地域に貢献したい、生まれ育ったふるさとに恩返しをしたい、地域の活気を取り戻したいと考える方は、地域連携を学びながらさまざまな取り組みを実践してみましょう。

この記事を書いた人

鈴木一生

・城西大学経営学部マネジメント総合学科助教。

・筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程修了。

・博士(図書館情報学)。

・文教大学文学部非常勤講師、筑波大学図書館情報メディア系非常勤研究員などを経て、2023年、城西大学経営学部助教に就任。

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