なぜ若者の投票率は上がらないのか|3つの原因と解決のヒント
選挙のたびに「若者の投票率が低い」と話題になりますが、なぜ上がらないのか、そして低いままだと何が起こるのかまではわかりにくいものです。
この記事では、若者の投票率が上がらない3つの原因と社会への影響、そして関心を高めるための解決のヒントをわかりやすく解説します。
若者の投票率の現状
若者の投票率は他の世代と比べてどのくらい低いのでしょうか。まずはデータと制度の両面から現状を整理します。
年代別に見る投票率の差


若者の投票率は、すべての世代のなかで最も低い水準にあります。
総務省の年代別投票率の推移を見ると、20代の投票率は国政選挙のたびに全世代で最下位となることが多く、最も高い60代と比べると2倍前後の差が生じる場面もあります。30代以下と60代以上では、実際に投票した人数で大きな開きが出ています。
しかも、この傾向は近年に始まったものではありません。全体の投票率が長期的に低下するなかで、若い世代の低さが続いてきました。数字のうえでも、若者の声が選挙に反映されにくい状況が見て取れます。
参考:総務省|選挙関連資料 国政選挙における年代別投票率について
18歳選挙権導入後も変わらない実態
選挙権年齢が引き下げられても、若者の投票率は大きくは上がっていません。
2016年に18歳選挙権が導入され、それまで20歳以上だった選挙権が18歳以上へと約70年ぶりに拡大しました。導入当初は若い世代の政治参加への期待が高まり、主権者教育の重要性も広く認識されるようになりました。
しかし、その後の国政選挙では10代の投票率も低い水準にとどまり、制度変更が投票率の上昇に転じるきっかけとまではなっていません。選挙権を得られる年齢が下がったことと、実際に投票へ向かうことのあいだには、まだ大きな隔たりがあります。
若者の投票率が上がらない3つの原因

若者の投票率が上がらない背景には、大きく3つの原因があります。意識の問題だけでなく、感情や制度の事情も関わっています。
政治と接点が少なく自分ごと化しにくい
若い世代は、政治を自分の生活と結びつけて考える機会が少ないという特徴があります。
人は年齢を重ね、仕事に就いたり子どもを育てたりするなかで、税金や社会保障、地域の課題を自分の問題として意識し始めます。一方、学生を中心とする若い世代は、こうした社会との接点がまだ少なく、政治が遠い存在に感じられがちです。
そのため、選挙で何が決まるのかが実感しにくく、投票の必要性を感じにくいという状況が生まれます。関心の低さは、若者個人の問題というより、生活環境による側面が大きいといえます。
政治不信と投票しても変わらないという無力感
政治への不信感と無力感も、投票から足を遠ざける大きな要因です。
各種の意識調査では、政治家を信頼できないと答える若者が多く、投票しても政治は変わらないと感じる人や、よくわからないので判断できないという声も目立ちます。こうした感情は、せっかくの一票に意味を見いだせない気持ちにつながります。
ただし、政治への不信感は若い世代に限ったものではなく、幅広い年代に共通する傾向でもあります。それでも投票へ向かう人とそうでない人の差が、若い世代では特に大きく表れています。
制度や情報のハードル
意識の問題だけでなく、物理的に投票しづらい事情があることも見逃せません。
進学で地元を離れた学生の場合、住民票を実家に残したままだと、原則として登録地でしか投票できません。そのため、わざわざ帰省しないと投票できず、結果として棄権につながりやすくなります。
加えて、投票の方法や手続きがわかりにくい、選挙の情報が十分に届いていないといった課題もあります。関心があっても一歩を踏み出せない、こうしたハードルが投票率を押し下げています。
低投票率が社会にもたらす影響

若者の投票率が低いままだと、社会にはどのような影響が及ぶのでしょうか。政治の構造から将来の負担まで、3つの段階で見ていきます。
高齢層の声が通りやすいシルバー民主主義
若者の投票率が低いと、政治は高齢層の声を重視しやすくなります。
日本は高齢者の人口が多く、しかも高齢層は投票率も高いという特徴があります。投票する人の絶対数で見ると、高齢層と若年層のあいだには大きな差が生まれます。政治家は当選を目指すため、より多く投票してくれる層の意向を意識しやすくなります。
こうして高齢層の声が通りやすくなる状況は「シルバー民主主義」と呼ばれます。世代間で政治への影響力に差が生まれ、若い世代の意見が相対的に弱くなってしまうのです。
若者の声が政策に届きにくくなる
投票率の低さは、若者の意見が政策へ反映されにくい仕組みを生みます。
政治家から見ると、投票率の低い層は選挙での反応が読みにくく、政策の優先順位で後回しにされやすくなります。「どうせ投票に来ない」と受け止められれば、若い世代に向けた政策に力が入りにくくなるのは想像に難くありません。
一票の影響力は、一人だけで決まるものではなく、世代全体の投票行動で決まります。若い世代がまとまって投票へ向かわなければ、その世代の声は政治の場で小さく扱われてしまいます。
社会保障や将来の負担に表れる世代間格差
投票率の低さは、最終的に若い世代のお金や将来の負担にも跳ね返ります。
政策の優先順位が高齢層へ傾くと、社会保障の予算も高齢者向けに偏りやすくなります。その一方で、現役世代や子育て世代への支出は抑えられる傾向があると指摘されています。20代から40代の投票率が下がると、若い世代にとって不利益が生じるという試算もあります。
さらに、こうした負担は将来世代へのツケとして積み上がります。国債の発行が増えれば、その返済は今の若い世代やこれから生まれる世代が担うことになります。投票率の低さは、遠い政治の話ではなく、自分自身の将来の生活に関わる問題なのです。
投票率を上げるための解決のヒント

若者の投票率を上げるには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。教育やきっかけづくり、学びの3つの視点から解決のヒントを見ていきます。
主権者教育の役割
投票率を上げる土台として注目されているのが、主権者教育です。
主権者教育とは、国や社会の問題を自分のこととして捉え、自ら考え、判断し、行動する力を育てる教育です。各党の公約を比べて投票を体験する模擬投票や、地域の課題を話し合う授業などが代表例として挙げられます。
2022年度からは高校で新科目「公共」が導入され、そのなかに主権者教育が位置づけられました。子どもの頃から物事の決定に関わる経験を重ねることで、大人になってからも社会と積極的に関わる姿勢が育つと期待されています。
若い世代が政治に関わるきっかけ
教育とあわせて、政治を身近に感じるきっかけづくりも大切です。
調査では、若い候補者が増えると10代や20代の投票率が上がる傾向があると報告されています。同世代が政治の場に立つ姿は、政治を自分たちのものとして感じる後押しになります。身近な生活のテーマから関心を持つことも、最初の一歩として有効です。
近年はSNSなどを通じて、政治の情報に触れる接点も広がっています。難しく構えず、気になるテーマから少しずつ情報を集めることが、投票への距離を縮めていきます。
学びを通じて政治を身近にする
政治や社会を体系的に学ぶことも、投票への関心を深める確かな方法です。
選挙の仕組みや社会保障、財政といったテーマは、断片的なニュースだけでは理解しにくいものです。大学などで腰を据えて学ぶことで、政治が自分の生活とどうつながっているのかが見えてきます。知識が増えるほど、投票で何を選んでいるのかを自分の言葉で考えられるようになります。
若者の投票に関するよくある質問
最後に、若者の投票についてよく寄せられる疑問にお答えします。進学や一票の重みに関する不安を解消しておきましょう。
進学で地元を離れても投票できる
進学で地元を離れても、投票する方法はあります。
住民票を実家に残したまま遠方で暮らしている場合は、不在者投票という制度を使えば、滞在先から投票できます。手続きには事前の申請が必要なため、選挙の予定がわかったら早めに準備しておくと安心です。
引っ越し先に住民票を移している場合は、転入から一定期間が過ぎれば新しい住所地で投票できます。自分がどちらに当てはまるかを確認し、投票の機会を逃さないようにしておきましょう。
まずはお住まいの自治体や進学先の選挙管理委員会で、手続きの詳細を確認してみてください。
一票で本当に政治は変わるのか
一票単体の力は小さく見えても、世代全体では大きな意味を持ちます。
たしかに、自分の一票だけで選挙結果が決まることはほとんどありません。しかし、同じ世代の人たちがまとまって投票へ向かえば、その世代の声は政治家にとって無視できないものになります。投票率の高さは、政策の優先順位を左右する力を持っています。
逆に投票しない人が増えれば、その世代の意見は政治に届きにくくなります。一票を投じることは、自分の世代の存在感を示す行動でもあるのです。
まとめ
若者の投票率が上がらない背景には、政治と接点が少なく自分ごと化しにくいこと、政治不信と無力感、そして住民票や情報といった制度面のハードルという3つの原因があります。
投票率が低いままだと、高齢層の声が通りやすいシルバー民主主義が強まり、若い世代の意見が政策に届きにくくなります。その影響は、社会保障の偏りや将来の負担という形で、若い世代自身の生活にも跳ね返ってきます。
こうした状況を変えるヒントが、主権者教育や政治を身近に感じるきっかけづくり、そして社会を体系的に学ぶことです。政治は遠い世界の話ではなく、自分の生活と将来に直結しています。
【監修:総合政策学部】


