核家族とは?家制度から近代における日本の家族の役割や形態を解説

地域・社会
蓼沼 康子

私たちの人生において、もっとも重要な存在ともいえるのが家族です。ところが今、日本社会では家族の数も人数も家族を作る人も減っています。親や兄妹、祖父母など、それぞれの家庭によって家族構成は異なるほか、時代の変化とともに家族のあり方や形態も大きく変わってきました。

これまでの歴史を振り返ったとき、日本の家族形態はどのように変化してきたのでしょうか。また、今後どのように変化していくのかもあわせて解説します。

日本の家族の平均人数

日本は長い歴史のなかで社会や環境が大きく変化してきました。時代の流れとともに社会が変わると、人々のライフスタイルや価値観にも大きな影響を及ぼします。

特に家族のあり方や形態の変化は顕著であり、戦後から現代に至るまでの統計データもそれを裏付けています。厚生労働省が公表している「国民生活基礎調査」の結果によると、1953年の日本全体の世帯数は約17,180万であったのに対し、2022年には54,310万と3倍以上に達しています。※世帯とは、一緒に暮らしている人のことです。

一方、1世帯あたりの平均世帯人員(同居する家族の数)は5.00人から2.25人へと半減している状況です。

戦前は、子どもと親、祖父母といったように三世代の家族が同居する家が多かったものの、現代では祖父母と離れて暮らす核家族が一般的です。また、単身者や子どもをもたない夫婦が増えていることも平均世帯人員が減少している理由と考えられるでしょう。

日本の家族制度の歴史

日本の家族制度はどのような歴史を経て制定され、どう変化してきたのでしょうか。

家族制度が明確に法律によって定められたのは明治時代にまでさかのぼります。1898年に明治民法によって「家制度」が制定されたのがはじまりです。

この法律が制定された理由は、国民に対して天皇が絶対的な存在であることを知らせるためです。当時の日本では、天皇の存在を認識していない国民も少なからず存在していたことから、天皇制と似た制度として家制度を法律によって制定したのです。

家制度の主なポイントは、「結婚によって妻は夫の家に入る(妻は夫の苗字に変更する)」こと、つまり夫婦同姓はこのときに決められ歴史的にはそれ程古いものではないということです。そして「家族の結婚や養子縁組は戸主の同意が必要」の2点でした。

ちなみに、上記にある「戸主」とは、家族を統括し扶養する義務がある人のことを指し、家制度では原則として男性が戸主となっていました。

しかし、日本の「家」はもっと前から存在していました。そして日本国憲法の制定や戦後の民法改正により、夫婦は同等の権利をもつことが原則となり、女性や子どもの権利を侵害する可能性のある従来の家制度は廃止されることとなったのです。

日本で増えつつある家族形態

戦後に制定された民法によって、日本の家族形態は変化しました。現在ではどのような家族形態が増えているのか、代表的なものをいくつか紹介しましょう。

核家族

核家族とは、1950年代にアメリカ合衆国の文化人類学者G.P.マードックにより命名され、親と未婚の子どもの形を言います。また夫婦のみの家族やひとり親世帯も含まれます。

祖父母と親、子どもの3世代以上が同居する家族は拡大家族とよばれますが、その対極にあるのが核家族の形態です。

家族への考え方が変わり仕事の都合で地元を離れ都心で暮らす人や、広い住居の確保が難しいなどの理由もあり特に日本の高度経済成長期に、核家族は一般的な形態になりました。

単身者

単身者とはその名の通り、配偶者や子どもをもたず単身で暮らす形態を指します。

人々の価値観の変化や経済的な理由によって、結婚をしないケースや結婚できない人も増えています。

また、従来は「女性は家庭に入って家族を支える存在」という性別役割分業という考え方が少なくありませんでしたが、現在は男女ともに家庭を支え、経済力をもつことが一般的になったことと、高齢者の増加により単身者の世帯が増えています。

同性カップル

男性または女性同士の同性カップルも増えています。現時点の民法では同性婚は認められていませんが、自治体によっては独自のパートナーシップ制度を制定しているところも多く、公的に同性カップルを認めるケースも増えています。

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現代における家族の役割はどう変化した?

明治時代になり、鎖国を終え開国した日本は、あらゆる点で欧米に追い付くことを目指しました。家族も例外ではありませんでした。欧米のいわゆる「家父長制」家族を参考に、旧来の日本の家をもとに明治政府が作成したものが、明治民法の中の「家制度」でした。

しかし、第二次世界大戦後の民法改正により、家制度は廃止され、原則として夫婦は平等とされました。

戦後の経済復興、高度経済成長期を経て、日本の家族は近代社会の価値観にマッチした近代家族に本格的になっていきました。近代家族とは、夫・父親が働きに出て収入面を支え、妻・母親は専業主婦として家庭を守り、子どもたちを育てるという性別役割分業に基づいた形の家族です。

しかし、1980年代から産業構造の変化やバブル崩壊、男女に関する価値観の変化により性別役割分業観が変化し、男女の在り方が変化しました。結果、家族の中も、夫一人が経済面を支えるのではなく、夫婦共働きという形が増えていきます。現在では、夫婦共働き世帯のほうが夫一人が収入面を支える片働き世帯よりも多く、男性も家事育児を担当しています。男性の育児休業も増加しています。

現代における日本の家族の問題点

日本における家族のあり方は多様化していますが、その一方でさまざまな問題点も明るみになりつつあります。

結婚と子どもの減少

日本社会の重大な問題とされる少子化は、政府が多くの政策を出しても止まりません。一人の女性が生涯に産む子どもの数である合計特殊出生率は、2022年度は1.26で過去最低となりました。現在の人口を維持するためのこの数字は2.07と言われています。

さらに、日本では結婚の数も減り続けています。戦後の1947年、1948年の第1次婚姻ブームでは年間の結婚数95万組で1970年の第2次婚姻ブームには110万組だったものが、2021年は約50.1万となりました。

児童・高齢者への虐待

児童や高齢者への虐待がニュースで報道されることも少なくありません。

核家族が増えた現代は、親や親戚など周囲に頼れる人がおらず、子育てにストレスやプレッシャーを感じるケースもあります。その結果、子どもに暴力や性的虐待、育児放棄などの虐待を加えてしまいます。

また、自宅で自分の親や家族を介護する場合も、周囲に頼れる人がおらず弱者への虐待に走ってしまうケースがあるようです。

DV

虐待は子どもや高齢者だけでなく、配偶者におよぶこともあります。

ドメスティック・バイオレンス(DV=家庭内暴力)とよばれ、夫婦や内縁関係にあるパートナーに対してさまざまな危害を加え、警察沙汰になることも珍しくありません。

DVは社会問題となったことから、2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が施行されています。

ヤングケアラー

ヤングケアラーとは、家族や親族の介護をする18歳未満の未成年者を指します。

本来であれば大人が担うような介護を、家庭の事情によって未成年者がせざるを得ず、十分な教育を受けられなかったり進学を断念したりするケースがあります。

ヤングケアラーが生まれる背景や理由はさまざまで、たとえば親が高齢であるケースや、家族が病気やケガによって介護できる人がいない、親が死別し祖父母の介護を自分がしなければならないなどが典型的です。

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少子高齢化が進む日本の家族形態の将来

日本は少子高齢化が進んでおり、家族形態はさらに大きく変化していく可能性があります。

祖父母と同居する拡大家族はもはや一般的な形態ではなくなり、現在は核家族や単身世帯が増えていますが、今後そのような傾向はさらに強まっていくでしょう。

従来の拡大家族では、義両親との同居に抵抗心を抱く人も少なくありませんでしたが、核家族の場合はそのような心配がなくメリットが大きいように思われます。

しかし、その一方で上記で挙げたような虐待やDV、ヤングケアラーといった問題も増える可能性があることも事実です。

「家族の問題は家庭内で解決すべきもの」という考え方は、現状では難しく、少子高齢化が進む日本においては、今後社会全体で子どもや高齢者を守っていく取り組みや仕組みづくりが求められます。

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城西大学の教育の特徴

新しい時代の家族形態や家族のあり方が問われるなかで、これらの社会課題を解決するためには、日本文化や文化人類学、民俗学はもちろんのこと、社会学や心理学なども含めた多様な知見・知識が求められます。

城西大学の現代政策学部では、これらのカリキュラムを中心に高い倫理観を身につけ、社会貢献できる人材の育成を目指しています。

まとめ

日本の家族制度は明治時代にはじめて法律が制定されましたが、それ以前からも長い歴史のなかで育まれてきました。

戦後に日本国憲法が制定されたタイミングで民法も変わり、今のような家族の形態へと変化してきましたが、いつも家族が存在していたことは事実です。

少子高齢化が進む日本において家族のあり方はさらに大きく変化していくと予想されますが、そのような変化にも対応できる社会の仕組みづくりが求められます。

この記事を書いた人

蓼沼 康子

  • 政治学修士 ( 1983年03月 明治大学 )
  • 研究分野 人文・社会 / 文化人類学、民俗学
  • 城西大学 城西短期大学 ビジネス総合学科 教授(2006年04月 - 現在)

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