情報科学研究センター

 
  学校法人城西大学
情報科学研究センター広報
- Information Science Research Center News -
2022.3.31 Vol.28 No.1  
情報科学研究センター  

清光会館正面(補正済み)

<写真:広報課提供>


巻頭言

情報科学研究センター 
 所長 中村俊子 
 待望の「JOSAI HUB」こと新23号館の講義エリアが完成しました。屋外空間やカフェなどを含む建物全体の竣工は2023年9月とまだ先ですが、2022年度前期より講義や実験、セミナー等での利用が始まります。新23号館は正門前に位置する城西大学の第一印象を与える建物となり、理系と文系、学生と教職員、大学と地域など坂戸キャンパスの交流の結節点となる場所としてJOSAI HUBと名付けられました。キャンパスライフに活気を与えてくれる居心地の良い空間となることを期待しています。
 3月17日卒業式の日に1日限定で新23号館講義エリアが公開されましたので、4年セミナー生達と内覧し、1階から2階につながる大階段で集合写真を撮りました。新しい教室や設備の見学の途中、テラスや5階廊下から1号館を眺めることができ、学生達はここで過ごした4年間の学生生活に思いを巡らせている様子でした。新23号館で彼ら彼女達と一緒に勉強できないことを非常に残念に、また、切なく思いつつ、しかしながら、4月に入るとすぐに取り壊しが始まる1号館を眺望できる貴重なひとときをセミナー生達と最後に過ごすことができ、感慨深く思いました。
 2021年度は大人数講義を除いて対面授業を中心とする教育に戻りました。学内では前年度の新型コロナウイルス感染拡大に伴うオンライン授業の経験をベースにWebClassやTeamsなどを利用したe-learning教材の拡充が進み、学習支援システムのより効果的な活用への意識が高まっているように感じます。また、学生も学習支援システムの操作に慣れ、それらの利用を前提とした授業を行うことが容易になってきています。このような状況を維持・発展させるためには、多くの先生方に学習支援システムを継続してご利用いただくことが重要です。情報科学委員会での要望を受け、情報科学研究センターでは年度末の3月23日に講習会を開催し、WebClassの具体的な活用事例および成果を報告するともに便利な機能や使い方を紹介させていただきました。多数の教職員の方々がご参加いただきましたことに心より感謝申し上げますとともに、いただいたご意見・ご要望は今後の参考とさせていただきます。
 2022年度は新型コロナウイルス感染症の第7波を心配しつつ、ポストコロナ社会における教育方法として反転授業やアクティブラーニング、また資料や作業のデジタル化など、情報システムの利用がますます進むことと思います。情報科学研究センターでは、今後も情報化の推進と、より便利で快適な情報環境の提供に努めてまいります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

情報教育システム(SCNL2018)の教育効果

経済学部
 経済学部では、コンピュータ・情報技術関連の授業を入門・初級レベルから中級レベル、資格・検定試験対策レベルまで段階別に設置し、講義およびパソコン実習を通じた情報教育を実践している。
 入門・初級レベルの授業には、「コンピュータ・リテラシーⅠ・Ⅱ」「情報技術Ⅰ・Ⅱ」「実践プレゼンテーション」があり、これらはパソコンやインターネットに関する予備知識を持たない学生を対象としている。中級レベルの授業には、「情報技術Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ」「表計算ソフトによる数量分析」があり、基本的な知識やスキルをすでに身につけた学生が各種ソフトウェアを利用しながら、さらなるステップアップを目指す内容となっている。また、資格・検定試験対策を行う授業としては、ITパスポート試験のための「IT論Ⅰ・Ⅱ」のほか、基本情報技術者試験を目標とする「情報学特講Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ」「情報技術Ⅶ・Ⅷ」「IT論Ⅲ・Ⅳ」が設置され、毎年多くの合格者を出している。
 上記のような情報教育を目的とした授業に加えて、経済学の実証分析を扱う授業においても、パソコン上で操作可能な各種ソフトフェアの利用が進んでいる。例えば、統計学や計量経済学、その他応用科目の授業では、データの整理や統計処理、計量分析の実習のために表計算ソフトのMicrosoft Excelや統計パッケージのStata、Rなどが活用されている。現実のデータを使ったパソコン実習は学生たちの積極的な授業参加を促し、学習効果も上げている。
 必修のゼミナール(セミナー)の授業においても、研究発表や学外討論会のプレゼン資料の作成のためにMicrosoft PowerPointが使われ、またレポートや卒業論文の執筆のために「日経テレコン」「聞蔵Ⅱビジュアル」「日経BP記事検索」「東洋経済デジタルコンテンツ」といった記事検索データベースが活用されている。
  近年では、1年次配当の「コンピュータ・リテラシーⅠ・Ⅱ」の指導内容をやや高度化し、パソコン操作に関する一般的な資格であるMicrosoft Office Specialist(MOS)検定対策のための知識・スキルも扱うようになっている。また、2020年度新設のデータサイエンスコースでは、プログラミングなどAI(人工知能)・データサイエンス分野の教育をスタートさせている。その他の科目についても、情報技術関連の資格・検定合格を目指す学生のニーズに対応して、授業内容・レベルの改善や配当年次の変更などを柔軟に行っている。
 なお、今年度も昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、受講生の多い講義では教室での対面授業が実施できず、ZoomやTeamsなどWeb会議システムを利用してオンライン(リアルタイムあるいはオンデマンド)で授業を行った。また、4月の新入生向けオリエンテーションでは、教材の配布にWebClassを活用した。
現代政策学部
 現代政策学部では,コンピュータ関連科目として,2021年度は「コンピュータ・リテラシーI・II,A・B」,「プログラミングI・II,A・B」,「情報学概論Ⅰ・Ⅱ,A・B」,「情報セキュリティ論」,「情報通信政策論」,「地域情報化論」を開講した。
 「コンピュータ・リテラシーI・II,A・B」については,すべての学生に一定レベルの基本的なスキル・知識・モラルを身につけてもらうため,2020年度より学部必修科目となった。また,より効果的なコンピュータ・リテラシー教育を実現するため,2007年度からレベル別クラス編成を導入しており,今年度も引き続き実施した。入学後に「コンピュータの基礎知識に関する確認テスト」をWebClassのテスト機能を使用し実施し,その成績に応じてクラスを分けた。
 2021年度も引き続き,前期の「コンピュータ・リテラシーI,A」においては,主にSCNL2018の利用,Power Point(プレゼンテーションソフト)・Word(ワープロソフト)の基本的な操作方法と機能の修得を目指した。後期の「コンピュータ・リテラシーII,B」においては主にExcel(表計算ソフト)の基本的な操作方法と機能・利用方法の習得を目指した。前年度と同様に,中学・高校でOffice系ソフトに触れる機会が多かった学生が以前と比べると増えてきており,上位クラス及び中位クラスの一部の学生にとっては,共通の教科書に沿った授業内容では進度が遅すぎる傾向が出てきた。そこで, 2015年度より,上位クラスについては,基本操作については共通の教科書を利用したが,より応用的な課題を毎週の授業内で提示して,学生が考えながらそれに取り組むなど工夫を施した。今年度は,より応用的な課題への取り組みを強化し,学部共通の教科書を用いながらも,レベル差に対応できるように改善した。
 一方で,コンピュータにほとんど触れたことのない学生もまだ存在しているため,下位クラスについてはできるだけ共通の教科書に沿って,重要な操作を繰り返しレクチャーすることで,ソフトウェアの一定レベルの使いこなしを習得することを目指した。このようにレベル別クラス編成によって,それぞれの学生たちに合わせたコンピュータ・リテラシー教育を実施することができた。
 2009年度から導入されたe-learningシステムであるWebClassについては各教員が工夫をしながら活用をすすめてきたが,今年度はオンライン授業の実施にともない,目的や内容に合わせた幅広い活用が見られた。具体的には,すべての授業(講義系・実習系・セミナー系含む)において,資料掲載,出席確認,試験・課題を実施した教員や,試験の正答を試験日翌日にWebClassで公開したり,学生の提出課題を配布資料として他の学生に参照できるようにしたりするなど,学生へのフィードバックを目的とした活用法が挙げられる。オンライン授業だけではなく対面授業においてもWebClass掲示板機能を用いるなどしてアクティブラーニングを展開した。
 授業評価アンケートを2017年度後期より一部授業,2018年度より授業評価の対象全科目でWebClassを使用し実施した。さらに,2018年度より留学に関するアンケート調査,留学中のファイル共有についてWebClassを使用し実施した。
また,2021年度より現代政策学部はWebclassの修学カルテを積極的に用いており,学生の修学状況の多面的把握に努めている。修学カルテの有効活用に関する学部FDもおこなった。
経営学部
 コロナ禍における307PC室の利用は感染症対策のため84席を24席に減らして授業を行った。1クラス60人程度であることから3チームに分けて教室での対面授業が3回に1回行えるようにした。ハイブリッド環境での授業は教室内にマイク音声を飛ばしながらオンラインにも音声を飛ばす必要があることから新しいデバイスを使いながら学習効果を最大限に高める工夫を行った。
 経営学部ではWebClassを学部創設当初の2004年から導入し、積極的にe-learning教育を進めてきた。現在まで継続しているWebClassの特徴的な活用方法は次の通りである。
教務関連では、ゼミナール、基礎ゼミのエントリーに利用している。上記の事務処理を行うことで、学部事務室の紙での処理がなくなったことから、業務の軽減へとつながっている。更に、電子データを多方面に活用でき、事務処理の効率化も達成された。
 また、出欠管理においてはWebClassで学内無線LANアクセス情報を利用した、IPアドレス制限設定による学生の「なりすまし出席」防止と集計の簡便化とあわせ、学外アクセスにおいてもFormsによる小テスト実施データのExcelデータ変換・活用による出欠管理の効率化を実現している。
このように、経営学部の学生は、WebClassだけでなくTeams、Zoom、Outlook、One Driveなど新しいソフトウェアを利用しながらコンピュータに触れる機会も増え、授業でのコンピュータ活用を抵抗なく受け入れることができている。以下では、そのような経営学部学生の情報教育システムの教育効果を「資格取得」、「教職科目」から述べる。

オンラインによる日商PC検定を実施

 2004年の学部開設当初からミニマムスタンダード(基礎的資格取得)教育を実践してきた。これは、簿記、情報、語学(英語)の1年次の必修科目で検定試験の合格を含めた教育指導である。情報については、平成27年度まで、「マルチメディア検定ベーシック」を目標にしていたが、平成28年度からは、ミニマムスタンダードを「日商PC検定(データ活用)ベーシック」に変更した。2021年度はコロナ禍の中、検定試験の実施は限定的であったが、対面にて検定試験を実施することができた。  データ活用ベーシックは経営学部のミニマムスタンダードとなっており、1年生全員が受験することになっている。しかし、2021年度は指導する該当科目「情報技術科目」がオンライン授業と対面授業が混在していることから、希望者のみを募り実施した。その他3級においては、希望者を募り実施した(表1参照)。
 情報ミニマムスタンダードを達成した学生に対して、平成24年度から「情報エキスパートⅠ・Ⅱ」を開講している。この科目は「ITパスポート試験」や「情報セキュリティマネジメント」を意識した学習内容で、さらなる知識向上を目指している。また、「ITパスポート試験」や「情報セキュリティマネジメント」へのモチベーションを高めるために、情報ミニマムスタンダードより上級の検定にチャレンジする試みも今年度から実施している。メディアリテラシー科目では「日商プレゼン3級」を、シミュレーション演習入門では「日商PC検定(データ活用)2級」を受検するように促している。
 
表1  2021年度経営学部 PC検定結果
受験月種類レベル受験(人)合格(人)合格率
7月データベーシック29313245%
7月文書3級66100%
12月文書3級221777%
12月データ3級282693%
12月プレゼン3級1919100%

高等学校教職科目の教科情報指導

経営学部では商業科、社会科公民に加えて保健体育科、情報科の教員免許を取得できるため、PCを使った演習科目を多数開講している。2020年の改定で高等学校の情報科は「社会と情報」「情報の科学」2科目から、「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の2科目へ再編され、「情報Ⅰ」は必修となり、プログラミング教育が含まれる点で注目されている。
経営学部では、情報科教員やIT系への就職を目指す学生へ向けたプログラミング実習科目やネットワーク実習科目として、「情報デザイン演習Ⅰ・Ⅱ」と「プログラミングⅠ・Ⅱ」がある。「情報デザイン演習Ⅰ・Ⅱ」では、HTML5とJavaScriptを使い、英語と日本語のWebサイトを完成させている。Webサイトに組み込むコンテンツ制作に関しては、画像編集ソフトを活用し、アニメーション等を制作している。完成したサイトは分析のため、学内サーバにアップし、学生間で相互に評価を行っている。「プログラミングⅠ・Ⅱ」はJavaやPHP言語を使用し、ソフトウェア開発に必要な要求定義工学を学び、「簿記システム」を制作し、システム開発の興味を深め、経営学への学習意欲を高めている。
 
理学部
数学科

 数学科では、坂戸キャンパス・紀尾井町キャンパス共に情報系科目を多く開設しており、そこではコンピュータを用いた演習が教育の中に取り入れられている。例えば、1年次の専門科目「計算機入門I・II」では、UNIXやプログラミングの入門的教育を行っている。2年次の「計算機数学A・B」および「プログラミングIA・IB」で専門的教育が始まり、3・4年次の「プログラミングIIA・IIB」、「実用アルゴリズム論A・B」、「情報数学A・B」、「暗号理論A・B」、「符号理論A・B」、「応用数値解析I・II」、「情報研究I・II」、「情報システム論I・II」、「数理モデル論I・II」に続く一貫した情報教育カリキュラムを組んでいる。また、専門科目の「コンピュータによる統計」、「数式処理による解析」、「数式処理による代数A・B」では、Excelおよび統計解析ソフトRを用いたデータ処理や、数式処理ソフトMapleを用いた解析学・代数学のコンピュータ演習を行っている。具体的な使用例や教育効果をあげてみると、「数理モデル論I・II」においては、通常教室で行う数値解析の理論的な講義内容を基に、C言語によるプログラミング実習を実施して、受講生に深い理解と技術の習得をうながしている。(* 一部科目は片方のキャンパスでのみ開講。)

 WebClass・Teamsは情報系科目に限らず数学科の多くの科目で出席確認、オンデマンド教材・講義資料・授業スライド・演習プリント等の提示、レポート課題の提出、オンライン試験実施などに積極的に活用されている。加えて、Zoom等のオンライン会議システムによる配信も利用されている。
また、数学科では、新入生対象の「入学前指導」のため、WebClassを利用している。毎年、推薦入試および指定校推薦合格者に対してレポートを課しており、送付したレポート課題や解答用紙をWebClassからも閲覧・ダウンロード可能にするとともに、解答のヒントなども提示している。また、全新入生に対して、テスト・アンケート機能で微積分の確認ドリルを実施している。レポート提出率は今年度もほぼ100%で、LMS導入後は正解率も向上しており、その効果がうかがえる。
化学科

 化学科では1年次の「コンピュータ・リテラシーⅠ」を基礎に、2年次には専門科目「情報科学序論」および「コンピュータ入門」でExcelを用いた実験データの処理、3年次には「情報科学Ⅰ」でC++言語入門、「情報科学Ⅱ」でVisual Basicによるグラフィックスプログラミングを学ぶ科目が設置されている。また「物理化学実験」では計算機実験としてExcelマクロを用いたヒュッケル分子軌道法による分子軌道計算ならびに軌道の等高線表示を行っている。このような基礎的情報教育を通して、以下に掲げる4項目の能力を養っている。

1.    化学の信頼できる情報の所在等を理解し、必要な情報を収集できる。
2.    収集した情報を整理し、資料作成に適切に活用できる。
3.    分子構造を描画できる。
4.    実験データの整理、統計処理、図示ができる。

 また、習得した知識および技能を、実際に学生実験のデータ整理やパソコン上で有機化学実験の反応を構造式作図による学習等に活用している。このことにより、情報活用能力の育成とともに、マクロ実験では理解が困難な現象についても理解度が向上する等効果が見受けられる。この他、一般の授業においても、WebClassを用いた電子教材の提示が行われ、授業の理解度を深める工夫がされた教材により、高度な内容の理解を容易にしている。4年次の「卒業研究」においては、化学計算ソフトChemDraw、Gaussian等を用いた複雑な分子構造の決定や分子間の相互作用の研究、電子・原子・分子の運動のシミュレーションプログラム作成と表示、NMRスペクトル・赤外スペクトル等のスペクトルデータの表示とその解析方法・帰属方法のプログラム作成と活用等に情報機器が利用されている。また、「卒業研究」では、卒業研究報告書の作成にExcelやR等のグラフ表示やその他ソフトによる化学構造式表示等で情報機器が活用されている。卒業研究発表会では全員がPower Pointを用いており、プレゼンテーション能力の開発に充分効果がうかがえる。
 最後に本年度はコロナ禍でのリモート講義が主流であったため、WebClass/Teams/Zoomなどを利用した講義が大多数であった。9月以降は回線容量・速度を考慮してと思われるが1号館内の演習室のPCを利用して聴講する学生もかなり見うけられた。今後はこのような使われ方もある程度考慮していく必要があるのかもしれない。少なくとも構内回線速度は10Gbps~40Gbps程度にスピードアップを図っていく必要があるのではないか。
薬学部
◆薬学部
薬学部における取組及び成果は以下のとおりである。

・薬学科
 本年度もコロナ禍の影響を受けて、一部の授業や演習において、Zoomによるリアルタイム配信のオンライン授業、あるいはMicrosoft Streamによるオンデマンドによるハイブリッド授業が実施された。即ち、授業科目において、原則対面で実施し、登校出来ない学生や、語学やスモールグループディスカッション(SGD)等常時多くの学生が言葉を近い距離で発しなくてはならない形態において、Zoomによるリアルタイムオンライン、あるいはMicrosoft Streamによるオンデマンドによるハイブリッド授業が行われた。授業では、Microsoft Teamsによるレポート課題の提示や提出、WebClassを活用してのオンライン授業の出席管理、演習やレポート提出が行われた。また、薬剤師として求められる基本的な資質に関する学生自己評価ではWebClassのe-ポートフォリオ機能を使用し、学生の意識や活動等に対するアンケート調査にMicrosoft Formsを併せて使用した。チーム活動を取り入れた一部の演習科目ではOneNoteを活用し、Zoomによるリアルタイムの議論を共有するためのツールとして用いた。加えて、Microsoft Teamsによる研究室内でのデータの共有や情報のやり取り、さらに学生教育をサポートするための教員の委員会活動でもMicrosoft Teamsが活用されている。
 情報科学リテラシーは、主に1年次の前期「フレッシュマンセミナーA」で行われている。最初に、(1)情報倫理についての注意、(2)大学内のコンピュータの使い方、(3)メールやインターネットの使い方、(4)WebClassなどの教育支援システムの活用の仕方、(5)ポートフォリオを用いた学習記録法などを学ぶ。次に簡単なWord、Excelの操作も学ぶ。ここまでは必修であり、全員が基本的な操作ができるものとして、授業で出された課題に対するインターネットでの調査、WebClassを用いた各教科からの演習問題への解答、実習でのグラフ作りやレポートの作成等にコンピュータは日常的に使われている。
選択科目としては、2年次の「情報科学」という集中講義(演習も含む)の中で、Word、Excelに加えて、Power Pointの活用を本格的に学習する。
 実習関係では、薬学実習AおよびB(1年次)、薬学実習C(2年次)、薬学実習E(3年次)、薬学総合実習演習B・C実務実習事前実習(4年次)など、それぞれで、実験結果の解析、薬理作用に関するコンピュータシミュレーションや薬歴管理システムなどを学んでいる。
 また、5年次生の学外実務実習を行う前に、薬学共用試験として「知識および問題解決能力を評価する客観試験(CBT:Computer-based Testing)」の合格が4年次で要求されている。そして、今年度で13回目のCBTが21号館と18号館のコンピュータを総動員して行われた。さらに、CBTを含めた薬学共用試験の結果の個別発表をWebClassで行っている。
5年次の学外実務実習は全てWebシステムを使って管理している。具体的には学習の進捗状況の入力、実習日誌の入力、教員との連絡はすべてコンピュータあるいは個人のデバイスを用いて行っている。その他、任意ではあるものの多くの学生は、症例検討の発表の準備のための資料収集およびプレゼンテーションなどにコンピュータを活用している。
 さらに、6年次の卒業研究でも、論文作成のために、コンピュータを使って情報を収集し、SAS(Statistics Analysis System)やExcelで実験結果を集計し、Wordを使ってレポートにまとめ上げている。集大成としての卒業研究の発表会では、全学生がPowerPointを使って、Zoomミーティングを用いて学内で発表を行った。また、2年次~4年次後期には、国家試験を見据えた各前学年次までの総復習である「薬学総合演習A」、「薬学総合演習B」、「薬学総合演習C(Ⅲ)」の内外、および6年次には、国家試験に向けた6年間の総復習である「薬学総合演習D」の内外で、WebClassを活用し、知識の定着・確認をしている。加えて、「薬学総合演習A・B」では、インターネットから情報収集し、PowerPointによる発表会を実施している。
 薬学専攻の大学院生の教育研究においても、「薬探索特論」、「薬物治療学特論」などの講義や、研究テーマに関して、文献調査(PubMedやSciFinderなど)、実験結果の集計、統計処理や解析(Excel統計、R、SASやSPSS)、表やグラフの作成(Excel)はもとより、報告書作成、発表媒体の作成・プレゼンテーションなどに、パソコンを駆使している。

・薬科学科
 1年次の「フレッシュマンセミナー」で一通りのコンピュータリテラシーを修得した後、インターネット検索により医薬品、化粧品、健康食品の安全性についてまとめ、PCによりプロダクツを作成してプレゼンテーションを行っている。また、同じくインターネット検索により、企業研究を行い、将来の進路ならびに就職活動へのイメージづくりを行っている。本年度は対面でグループディスカッションと発表を行った。2年次には、薬理学の授業の中で、コンピュータシミュレーションを使用して、薬理作用の理解に利用されている。また、薬科学実習Cでは、実習で得られたデータを表計算ソフトExcelを用いて図表化する事で、使用方法を習得している。更に、3年次の薬科学実習Eでは、自然科学分野のデータ解析に必須である統計解析手法を修得するため、統計解析ソフトウェアのSAS(Statistics Analysis System)の使用法を学び、実際に実習での実験結果を解析している。3年次の薬科学実習Fからは、研究室に配属され、卒業実験での研究内容についてプレゼンテーションをしている。4年次には卒業実験として、文献検索、卒業実験論文作成、卒業実験発表媒体の作成・プレゼンテーションなどに、1~3年次に修得した知識技能を駆使して、コンピュータを活用している。卒業実験発表会では、全員がオンラインでPowerPointを用いてプレゼンテーションを行なった。
 その他、学部の講義でもWebClassをとおして講義資料の公開、確認試験、レポート提出を行い、授業アンケートも実施し、各教員へのフィードバックも行なっている。本年度の講義は、ほぼ対面で実施されたが、昨年度利用したWebClassを引き続き活用した講義がほとんどであった。
 大学院の講義でも化合物の安定性や反応性の計算結果を3次元的にコンピュータ表現するなど、大いにコンピュータを利用している。また、最新の病気や薬の情報は活字となる前にインターネットで公開されている場合が多く、コンピュータを使って情報を収集し、Wordを使ってレポートにまとめ上げている。さらに、集大成としての修論の発表会では、全院生がオンラインでPowerPointを使って発表した。

・医療栄養学科
 1年次配当の「栄養情報科学演習」の教育目標は「情報の収集、整理、提供を効果的に行えるようになるために、基本となるソフトウェアの取扱いや使用、インターネットを利用した情報の収集、開示、各種データベースの使用法に関する基本的知識と技能を身につけること」である。その目標を達成するためにワープロソフト(Word)、表計算ソフト(Excel)、プレゼンテーションソフト(Power Point)、ウエブ閲覧ソフト(インターネットエクスプローラー)、Webmail、WebClassなどの教育支援システムを中心に基本的使用法とその応用を演習により修得している。また、上級学年における栄養計算の基礎を学ぶ目的で「エクセル栄養君」による献立作成と栄養計算の演習も取り入れている。また、専門職としての情報発信の重要性について理解し実践できるための新しい内容を取り入れている。具体的にはhtmlの基礎を学びホームページ作成や、効果的なプレゼンテーションの手法を学ぶと共にパワーポイントの動画機能などを使った内容に取り組んでいる。
 2年次以降、栄養情報科学演習で身につけた基本技能の応用として上位学年配当の栄養教育論A・B及び栄養教育論実習や給食経営管理実習での栄養評価または献立の評価のための栄養計算に活用したり、患者への栄養教育のための情報収集や資料作成の演習に応用したりすることで、実践での応用力も身につけられるよう配慮されている。また、解剖生理学実験Bでは、自ら行なった薬理実験から得られたデータを使って、統計処理(Excel統計)やグラフ作成(Excel)を行ないデータの科学的分析と評価の基礎を学んでいる。
 各研究室に配属した4年生の卒業実験や医療栄養学専攻の大学院生の教育研究においても、研究テーマに関する文献調査や実験結果の集計、統計処理や解析(Excel統計やSPSS)、表やグラフの作成(Excel)にパソコンを駆使している。最終的には卒業研究あるいは修士論文発表では全ての学生がパワーポイントを使用して、わかりやすい効果的な発表が出来るようになっている。また、薬学部教員によって作成され、インターネット上で公開されている「食品‐医薬品相互作用データベース」や「抗がん剤と食事の相互作用・禁忌食品データベース」を利用した教育も行われている。データベースの内容を利用した学習もさることながら、教育活動の一環としてMEDLINEなどの医学系論文検索サイトで新たな相互作用の報告を自分で検索して、原書を入手してその内容からデータベースレコードを作成することにも挑戦している。これらの作業を通して、情報の利用にとどまらず自ら情報を発信するための知識と技能をも身に付けられている。
短期大学
1.13号館のPC演習室とその利用状況について

  本年度は前期・後期を通じて対面授業を原則としたが、一部はオンライン授業等として利用された。十分な感染予防対策のため利用定員を減らした運用となった。13号館における2021年度のPC演習室を表1に示した。各演習室のPC設置台数とインストールされているソフトウェアは、昨年度と同様である。401、403教室は情報リテラシー教育とデザイン演習などのメディア教育に利用されている。短期大学の授業以外に現代政策学部等の授業にも活用されている。409教室はAdobe Premiereがインストールされているように、映像処理などに特化した教室である。412教室は主にオープンルームとして、短期大学生、別科留学生、学部学生に利用されているが、授業でも活用されている。例年401教室および403教室はMOS検定などのJUキャリアラウンジの各種講座で活用される。

表1 13号館のPC演習室の概要(2021年5月現在)
演習室PCの台数主なソフトウェア備考
40140台MS Office, Visual StudioPC演習室
40340台MS Office, Visual StudioPC演習室
41220台MS Office, Visual StudioPC演習室
4096台Adobe Premiere, Photoshopマルチメディア室


2.PC演習室を利用した2021年度開講科目とその教育効果について

(1)情報リテラシー教育における活用と効果
 PC演習室を利用した2021年度開講科目を表2に示した。短期大学生全員に対する情報リテラシー教育を担っている科目がコンピュータ演習I、IIである。コンピュータ演習Iでは、はじめに電子メール、WebClass等の利用方法について学び、さらに表計算(MS Excel)について詳しく学ぶ。コンピュータ演習IIでは、ビジネス文書作成(MS Word)などを行っている。プレゼンテーション演習では、プレゼンテーション資料を作成し、実際に発表する(PowerPoint)。

(2)情報専門教育における活用と効果
 短期大学における情報専門教育の1つの目的は、「会社の実務で使えるビジネスコンピューティング教育」である。主にExcelを用いた高度な表計算能力とビジネス文書の作成能力の向上が主眼である。

 次に、短期大学ではプログラミング言語教育にも力を入れている。コンピュータの操作技能の向上だけにとどまらず、自らがアプリケーションソフトウェアを開発する能力がこれからの時代は求められてきている。短期大学では、初級プログラミング演習および中級プログラミング演習を開講している。同演習では、Visual Basicを開発言語として利用し、プログラム開発能力の向上に努めている。卒業後にSE(System Engineer)として就職する学生もあり、その教育効果があると考えられる。今後、ますますこのような専門性をもった短期大学生が社会で必要とされていくことが予想される。また、2年次開講のビジネスコンピューティング演習では、MS Excelの財務関数など、実務でよく使われる関数について学んでいる。さらに、経営プログラミング演習では、Excel VBA(Visual Basic for Applications)を学び、種々のマクロ機能やExcelプログラミングについての演習を行っている。コンピュータ会計では、基礎的な会計実務知識の理解を、クラウド環境を利用した会計ソフトによる演習を主眼としている。

 情報専門教育の3つめの柱はマルチメディア教育である。その中の1つは画像処理に関する教育で、デザインの基礎、デザイン演習で画像処理の基本的な技能を習得し、具体的な作品の作成を行っている。2つめは映像処理技能の習得である。映像制作の基礎、映像制作演習では、学生自らが映像の撮影・編集・書き出しなどの一連の作業を行い、作品を制作しており、映像処理に必要な全ての技能を習得している。他にプレゼンテーションソフトウェア(PowerPoint)による資料・発表により基礎的技能を習得している。


表2 PC演習室を利用した開講科目(2021年度開講)
科目名年次 使用する主なソフトウェア
コンピュータ演習I1必修MS Excel, PowerPoint
コンピュータ演習II1必修MS Word, MS Excel
コンピュータ応用演習1選択MS Excel, PowerPoint
初級プログラミング演習1選択Visual Studio
中級プログラミング演習1選択Visual Studio
ビジネスコンピューティング演習2選択MS Excel
経営プログラミング演習2選択MS Excel(VBA)
プレゼンテーション演習2選択PowerPoint
コンピュータ会計2選択MS Excel, Microsoft Edge
デザインの基礎選択Adobe Photoshop
デザイン演習1選択Adobe Photoshop
映像制作の基礎選択Adobe Premiere
映像制作演習選択Adobe Premiere

2021年度センター活動の概要

 コロナ禍の影響で、2021年度は対面授業を主体としつつも、状況に応じてフレキシブルに対応するという方針に基づき授業が実施されました。大きな変化としては、対面授業にオンライン授業の利点を取り入れ、より一層、教員と学生とのコミュニケーションを円滑に行うなど授業の双方向性を高めようという取り組みが増えたことが上げられます。
 このような授業の実現に向けて、情報科学研究センターでは学習支援システム(WebClass)、オンライン授業実施のためTeamsやZoom環境、安定したネットワーク環境を提供し運用を進めました。
 また、学生の主体的な学びを支援するための取り組みにも着手しています。以下に具体的な内容を紹介します。

1.学生情報の活用について【学生カルテシステム Campusmate-J/StudentChartの導入】
 学生個々の学習状況の把握と学生指導体制の一本化のため、学生カルテを導入しました。個人情報の管理を徹底しながら、学生個々へのきめ細かな支援、休学・退学が危惧される学生の早期発見、就職支援等への活用を目指しています。
 具体的には、学生情報、履修情報、成績情報など業務にとらわれず横断的な照会が可能となります。また、学生について個々に所見の入力が行え、その所見を学内の教職員が共有可能となります。こうした学部学科や部署の枠を超えた学生情報の蓄積と共有により、個々の学生に応じたタイムリーなサポートを実現します。

joho2022

2.修学ポートフォリオの活用に向けて【修学カルテ(WebClass)の利用】
 修学カルテとは、学習支援システムWebClassで利用することができるシステムです。
学生自身が、個別の授業科目の合否や成績だけでなく、学習教育目標に係わる到達度を把握し、自己評価や今後の目標や取り組みに対するコメントを記録したり、担当教員のコメントを確認し、今後の学修に活かすことができます。
 また、学習記録ビューアでは、WebClassを活用した授業の履修状況等を俯瞰することができます。学生・教員ともに、自分が参加・管理しているコースの活動・利用状況を一覧で確認することができます。

3.新入生へのPC販売を開始【PC必携化に向けて】
 2021年度の入学者に対し、PC必携化を推進するため、推奨ノートPC購入時に5万円を大学から補助しました。
学校や企業をはじめ社会全体でDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進んでいます。とりわけ、コロナ禍での各種行動制限等の経験を通し、その意義や必要性が改めて認識され、今後ますます加速していくことは必須です。
 大学での授業形態も大きな変革を向かえています。本学では、全ての学部において授業課題の提出や発表などPCを利用してさまざまな活動を行うことが必要です。また、将来に向けてさらに高度情報化していく社会に対応できる情報処理・活用能力を有し、卒業後も習得したスキルを十分発揮できる人材教育の充実を図っています。
 

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2021年度センター講習会報告

 WebClassは大学向けに開発され、教材やテストの作成、レポート提出や成績データの集計がシンプルに行えるLMS(ラーニング・マネジメント・システム)です。その特徴は、誰でも簡単に使えること、データ出力、集計、分析、管理が容易に行えること、学内にある各システムと柔軟にデータ連携ができること、パソコンだけでなく各種モバイル端末で利用できることなどが挙げられています。
 城西大学でも2020年度以降のコロナ禍における教学の基盤システムとして多くの教職員により活用され、オンライン授業や試験が適切に実施されてきました。一方で、教場授業が中心に戻りつつある現在において、WebClassの利用頻度が再び低下しています。情報科学研究センターでは、平常時の対面授業においても有用なツールであるWebClassを活用していただくため、便利な基本機能や有用な機能についてさらに知っていただくことを目的に講習会を開催しました。

日時:2022年3月23日(水)10:00 ~ 11:10
方法:オンライン(Zoom)開催
内容:WebClass初級講習会
  1. ご挨拶
    情報科学研究センター 所長 中村 俊子 先生
  2. WebClassの利用促進に向け
    演者:語学教育センター 大橋 稔 先生
  3. 教場授業における使用事例紹介
    演者:薬学部薬科学科 片倉 賢紀 先生
  4. WebClassの基本機能と有用な機能の紹介
    講師:城西大学情報科学研究センター 小櫻 美保 氏
  5. 質疑応答

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