現代政策学部 Department of modern policy

教員の独り言

現代政策学部の教員が、研究・教育の合間に日々考えていることをご紹介する教員コラムです。

現代政策学部は、政策学、法学、経済学、IT、福祉、文化など幅広い専門分野の教員から構成されています。研究論文や教科書ではない読みやすい形で、研究・教育の一端を毎月ご紹介させていただきます。
第1回は文化政策がご専門の土屋先生です。
2019年11月 かつての文化行政は今? 土屋正臣
私の専門は文化政策である。今日の文化政策と言えば、文化活動の振興や文化による地域づくりなど、比較的目新しい政策として取り上げられることが多いかもしれない。しかし、その直接の淵源にさかのぼると、1970年代の地域政策に行き着く。1970年代の文化政策は革新自治体(主に革新政党の支持を受けた首長による行政運営)が主導してきた。都道府県レベルでいえば、兵庫県や神奈川県、そして埼玉県である。
当時、「行政の文化化」をキーワードに文化政策をリードしてきた畑和 埼玉県知事は、県行政として様々な文化に基づく施策を展開する一方、住民にもっとも身近な自治体である市町村の文化政策推進に注目していた。1980年代に埼玉県は、「埼玉県文化行政モデル市町村」として、嵐山町、狭山市、行田市、白岡町(当時)を指定し、市民参加による提言書の作成を促した。
このうち白岡町(当時)では、1980・1981年の2カ年にわたって、市民や有識者で構成された文化行政研究会が設置された。その議論の中で白岡駅自由通路に町民ミニギャラリー設置が提言され、実際に設置された。当時の感覚としては、個性的で、誰もが気軽に文化的な薫りに触れられるような斬新なアイディアであったに違いない。白岡駅は1976年に橋上駅舎化しており、その4年後にギャラリーが設置された。現在でも市民の創作活動の発表の場として親しまれている。設置から約40年が経過し、日常生活のなかに融け込んでいる。
ミニギャラリーは、今日の文化による都市の再開発やトリエンナーレなどのアートプロジェクトと比較すれば、文化政策としてはごく小さな取組みに過ぎないかもしれない。しかし、その背景には、市民の参加によって新たなまちづくりを模索する行政と、それに応えようとする市民の真摯な議論や提言があった。この流れは、当時の自治体経営を問い直す試みでもあった。その上で実現したギャラリーは、現在まで引き継がれ、今なお、そこに暮らす人々に意味や価値をもたらしているとすれば、当時の文化政策の意義は失われていないのではないだろうか。

 
〔引用・参考文献〕
・第二次白岡町文化行政研究会(1981)『展開と充実』
・ウエルシア介護サービス㈱HP
(https://www.welcia-kaigo.co.jp/news/白岡市市民ミニギャラリーに作品展示中%EF%BC%81/)

白岡駅ギャラリー②

現在の白岡駅ギャラリーの様子
ウエルシア介護サービス㈱HPより)
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