薬学部医療栄養学科

医療栄養学科 スポーツ栄養コラム
「食」の力でスポーツの未来をサポートする管理栄養士

第5回 【基礎研究の視点から】疲労について①

 今回の岩田が担当するコラムでは、「疲労」についてお話をしていきます。
 早速ですが、皆さん日々の生活などによって疲れは溜まっていないでしょうか?疲労には、肉体的な疲労による末梢疲労だけでなく、慢性的な心理的ストレスなどによる中枢性疲労が存在します。
 平成11 年に実施された厚生省(現在の厚生労働省)疲労調査研究班による疫学研究から、わが国で疲労を自覚している人の割合は就労人口の約60%にもわたり、その半数が半年以上続く慢性疲労に悩まされていることが明らかとなり1)、現在でもその数は増大していることが想定されます。
 疲労による影響として、思考能力や注意力さらには行動量・作業量の低下をきたすことで十分な活動ができなくなり、社会において経済的な損失を与える一因となっているとともに、慢性的な疲労の蓄積は生活習慣病の発症にも関わってくることから医学的な観点からも大きな問題となっています。一方で、スポーツにおいても競技パフォーマンスの向上や怪我を予防するためには「疲労」は切り離せない問題となっています。
 近年では、社会のニーズと相まって「抗疲労」をターゲットとしたビジネス市場が拡大しており、様々なサプリメントや健康食品、漢方、健康グッズなどが売られています。その中でも日常的に摂取する食品の機能性に注目が集まっており、大阪市といくつかの企業や大学での取り組みである「疲労定量化および抗疲労医薬・食品開発プロジェクト」において、アスコルビン酸(ビタミンC)やコエンザイムQ10、鳥の胸肉やマグロ・カツオに多く含有するイミダゾールジペプチドなどの栄養素について科学的に検証されています。また、疲労のメカニズムとして活性酸素の産生や炎症反応が関与していることが報告されていますが、未だすべてが解明されているわけではないため、現在も多くの研究者によってこれら分野は研究されています。特に、生体内において食品による抗疲労効果のメカニズムを解析するに当たっては、ヒト臨床試験とともにマウスやラットなどげっ歯類を用いた基礎研究も重要となってきます。しかしながら、実験動物を用いた評価には注意しなければならないこともあるため、次回の私の担当コラムでは、さらに詳しく「疲労」についてお話をしていこうと思います。

1) 厚生省特別研究事業疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復手法に関する研究,平成11年度研究業績報告書, 2000.

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今回の執筆者:岩田 直洋 助教(生体防御学研究室)
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